「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」。憲法第21条はそう定めている。

 自民党の中には、憲法の条文を十分に理解せず、言論や報道について論じる議員がいるようなので、あらためて読み直し肝に銘じてほしい。

 安倍晋三首相に近い自民党若手議員の勉強会「文化芸術懇話会」で、安全保障関連法案に関して、出席者から報道機関に圧力をかけ、言論を封じようとする動きが出た。

 不見識極まりないことであり、看過できない。

 勉強会は作家の百田尚樹氏を講師に招いて開かれた。

 出席議員からは「マスコミをこらしめるには広告料収入がなくなることが一番だ」として「文化人、民間人が経団連に働き掛けてほしい」などと、マスコミへの圧力を求める意見が出た。

 「沖縄の特殊なメディア構造を作ってしまったのは戦後保守の堕落だった。左翼勢力に完全に乗っ取られている」との発言もあった。

 見当違いだろう。沖縄の2紙は民意を背景に、良識に基づいて言論を展開していると言うべきだ。長年の懸案である米軍基地問題で県外移設を強く求めるのは当然である。

 もう一つ、見過ごせないのは、百田氏が「沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない」と述べたことだ。

 百田氏の発言をめぐり、沖縄タイムス、琉球新報が出した共同抗議声明は「発言は、政権の意に沿わない報道は許さないという”言論弾圧“の発想そのもの」と指摘。「いずれ全国のマスコミに向けられる恐れのある危険きわまりないもの」として、言論、表現の自由を弾圧する動きに断固反対する決意を示した。

 私たち共通の問題と受け止め、2紙の声明を支持する。

 安保法案を審議する衆院平和安全法制特別委員会では、報道機関への圧力との指摘に対し、安倍首相が「報道の自由は民主主義の根幹だ。尊重されなければならないというのが安倍政権、自民党の立場だ」と述べた。

 野党は民主党の岡田克也代表が「自民党のメディアに対する締め付けがだんだんあらわになってきた」と非難するなど、追及する構えだ。

 このところ、報道機関への圧力とも取れる動きがあるのは問題である。

 自民党は安保法案審議への影響を懸念して、勉強会代表の議員を処分したが、それで済むものではない。

 今の自民党に、衆院選の圧勝で、勉強会のように何を言っても大丈夫だとの意識はないのか。傲慢さを反省し、改めてもらいたい。良識ある議員こそ声を大にすべきだ。

 過去2回の政権交代が示すように、国民不在の政権運営を続け、有権者の信を失えばその末路は哀れである。

 延長国会では、政府・与党が数の力で安保法案を成立させる気配も見え始めた。

 自由な言論と報道で、政府を厳しくチェックしたい。