手軽に世界とつながれるインターネット。便利さの裏側には危険も隠れています。徳島市出身の弁護士・北條孝佳さんは、サイバー犯罪対策の専門家。母校・徳島市富田中学校で講演をした北條さんに、安全にネットを使うにはどんなことに気をつければいいかを聞きました。(講演内容に、徳島新聞記者によるインタビューを加え、再構成しています)

若者が巻き込まれやすいサイバー犯罪について解説する北條孝佳弁護士=徳島市富田中学校

 北條孝佳 ほうじょう・たかよし 徳島市出身。徳島市立高から電気通信大、同大学院修了。2000年から2014年まで警察庁で技官として、サイバー犯罪対策の研究に従事。2016年に弁護士登録し、西村あさひ法律事務所に勤務。

Q チケット詐欺や集団自殺の呼び掛け、炎上など、SNSを使った犯罪やトラブルに若者が巻き込まれることが増えています。これはどうしてでしょうか。

A インターネットは世界と手軽につながることができる便利なものですが、国境がなく、インターネット全体を管理している警察組織もありませんし、名前を隠して投稿もできてしまうため、捕まらずに犯罪も簡単にできてしまいます。

インターネットによる事件は遠い世界の特別な出来事ではありません。誰でもインターネットによる事件に巻き込まれてしまう可能性があり、今、皆さんが事件に巻き込まれていないことはラッキーといえるでしょう。今後もますますインターネット社会になり、その重要性も高まるため、インターネットなく生活はできないといっても言い過ぎではありません。

若い人の中には小さい頃からインターネットに接するのが当たり前の生活になっている人も少なくなく、年配の方たちよりもより身近にインターネットを利用しています。インターネットの危険性をあまり意識せず利用しているため、若い人たちが犯罪に巻き込まれることが増えているのだと思います。危険性も理解した上で安全な使い方を身につける必要があります。

Q 若い世代に身近なラインやツイッター、インスタグラムなどのSNS。投稿する時どんなことに気をつければいいですか。

A SNSのトラブルを大まかに分けると、炎上と事件・犯罪です。

炎上とは、ウェブ上の投稿などに対して批判が殺到し、収拾がつかなくなることをいいます。「ノリで」とか「ウケると思ったから」とか、軽い気持ちで投稿した文章や写真が思わぬ炎上を招くと、投稿者の氏名や顔写真などの個人情報が特定・公開され、場合によってはその影響が家族にまで及ぶこともあります。

〈炎上の事例いろいろ 気軽な投稿が大問題に〉

◆コンビニのアイスクリームなどのショーケースに人が入った写真を投稿…コンビニが潰れてしまいました

◆そば屋の食器洗い機にアルバイト店員が入った写真を投稿…そば屋が潰れ、写真撮影・投稿にかかわったアルバイトに賠償請求されました

◆「銀行に勤める母から芸能人が来たと聞いた」と娘が投稿…銀行が謝罪文を公表

複数人で一人をいじめている動画を動画投稿サイトに投稿したケースでは、いじめ加害者の住所や氏名、顔写真だけではなく、父親の名前や職場、家の写真、進学先まで特定され、さらには引っ越し先の住所や電話番号も特定されました。

一度炎上した投稿者やその家族は、検索サイトを使えば簡単に特定できてしまうため、進学の推薦や就職の内定が取り消しになったり、結婚が破談になったりと、その後の人生にも影響があります。個人情報が拡散してしまい、将来を悲観して自殺した投稿者もいるそうです。

悪気なく不正確な情報を拡散するのもトラブルになります。ある事件の加害者が報道されたとき、加害者の父親という男性の個人情報や経営する会社の情報がインターネット上に書き込まれ、あっという間に拡散してしまいました。その男性は加害者とは無関係でしたが、経営する会社に苦情の電話が殺到し、しばらくの間、休業することになりました。

〈アドバイス〉

いい使い方とは、誰が見ても感じがいい投稿をすること、逆に、見るとイライラしたりひどいなと思ったりするのは悪い使い方です。自分が投稿する時に「自分を知らない人が見た場合、どんな気持ちになるか」を一度考えてから投稿しましょう。

Q インターネットの利用では「個人情報に気をつけて」と言われます。どういうことに気をつければいいですか。

A インターネット上で住所や氏名などを書き込むとき、慎重になる人は多いでしょう。でも、気をつけてほしいことはそれだけではありません。

例えば、ツイッター上で「中学生はこの投稿をリツイートしてくれたら○名様に○○を差し上げます」という呼び掛けにリツイートをしてしまうと、リツイートした人は中学生のアカウントであるということが簡単に知られてしまいます。

無料のアプリをダウンロードするときには、位置情報やアルバムなどそのアプリに関係ない機能にアクセスする権限の許可を求める表示が出ることがあります。これはアプリを作成している会社にスマホ内の情報を提供していることになります。

SNSのアカウントのIDとパスワードも慎重に管理しましょう。他人のアカウントのIDとパスワードを使ってログインすることや、他人のアカウントのID、パスワードを他の人に教えることは犯罪です。また、他人にアカウントを乗っ取られて、自分ではないにもかかわらず、酷い内容の書込みなどがされれば、それを見た人から批判を浴びてしまうことにもなります。

IDとパスワードは慎重に管理し、他のアカウントや登録サイトとは同じパスワードを設定しないように、1アカウント又は1サイトに1つのパスワードを設定しなければなりません。これをパスワードの使い回しの禁止といい、パスワードの使い回しをしてしまうと、1つのパスワードが盗まれてしまえば、他のアカウントやサイトのパスワードも盗まれたことになってしまうからです。

また、写真や動画も大事な個人情報です。自分や友達の写真、動画をSNSに投稿したり、ラインで送ったりすることも少し慎重に考えてみましょう。他の人が見ることはないか、他の人が見ても平気か、投稿された写真に写っている友達がその写真を見て恥ずかしい思いをすることはないか、など、投稿前にいったん考えてみましょう。

〈裸の画像は送らない、付き合っている人との写真も要注意〉

ある調査では、知り合った人に裸の自撮り画像を送ったことがある人のうち、半数以上を中学生が占めました。ある女子中学生は「裸の画像を送ったらプリカをあげる」と言われ、ラインで裸の胸の画像を送信。男子生徒も例外ではなく裸の画像を送信して被害に遭っています。さらには、「裸の画像をみんなにばらまかれたくなければもっと写真を」と要求がエスカレートしていきます。

ネットで検索すると、若いカップルのキス写真がたくさん出てきます。「彼氏や彼女とのラブラブな写真をみんなに見てもらいたい」と写真を投稿していませんか。でも別れたら?将来結婚した相手が見たら? どう思うでしょうか。

■これだけは気をつけて■

インターネットの世界に公開された情報は、完全に消し去ることはできず、何年も漂い続けます。今付き合っている人との写真、お小遣い稼ぎのための裸の自撮り、ウケ狙いのいたずら写真、不確かな情報を元にしたデマ投稿…。いつか後悔するかも。投稿する前に、一度振り返って考えてみてください。

インターネットは便利だけど危険性もあり、自分が加害者になってしまう場合や、被害者になって家族にまで危険が及ぶ場合もあるのです。スマートフォンを両親がいつ見てもいいというような使い方をしましょう。

 ◆保護者へ◆

〈若者が巻き込まれる事件は出会い系サイトからコミュニティーサイトへ〉

かつてインターネットを使った中高生が被害者となる事件は、出会い系サイトが中心でした。しかし、法律ができ規制が進んだ現在は、出会い系サイトでの被害は右肩下がりになってきた一方、誰もが利用でき、規制されていないツイッターやラインなどのコミュニティーサイトを使った犯罪被害が増えています。ツイッターには援助交際を呼び掛ける小学生や中学生の書き込みもあり、裸の写真まで投稿されています。

有害サイトへのアクセスを制限する「フィルタリングサービス」はぜひ取り入れましょう。技術を最大限活用した上で、大切なのはリスクを管理し、できるだけ回避するための教育です。

座間の事件も、きっかけはSNSへの書き込みでした。「死にたい」「助けてほしい」という思いを書き込んだけど、身近な家族や友人らなど、届けたい人には届かずに、届いてはいけない人に届いたから起きてしまった事件です。

インターネットでつながった人に会いに行くという行為がなぜダメなのか、「事件に巻き込まれるかもしれない」「殺されるかもしれない」と最悪の事例を伝えた上で、安全な使い方について親子で話し合っておくことが大切です。

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