こんな不誠実な対応は、到底容認できない。

 北朝鮮が、日本人拉致問題などの再調査結果の報告延期を日本政府に伝えてきた。

 拉致被害者の再調査をする特別調査委員会を発足させて、1年になる。にもかかわらず、北朝鮮は一向に詳細な報告をしようとしない。

 日本政府は、事態打開のために独自制裁の復活を検討するなど、強い姿勢を見せるべきではないか。

 北朝鮮が報告延期を通告したのは、1年という区切りを機に、報告の提出や制裁強化を求める世論が日本で強まったことを意識したためのようだ。現時点では、見返りに制裁解除や人道支援を引き出すのは難しいと判断し、日本の出方を探るのが狙いとみられている。

 しかし、延期するなら、北朝鮮は理由をきちんと説明しなければならない。

 調査の進ちょく状況や報告を提出する時期、これまでに判明している情報などを示さないと、不信感は増すばかりである。制裁の解除など、一層遠のくと知るべきだ。

 日本と北朝鮮が拉致被害者らの再調査で合意したのは、昨年5月である。7月に北朝鮮が特別調査委員会を発足させたことで、日本は制裁の一部を解除した。10月には政府代表団が訪朝し、今年に入ってからは月1回のペースで非公式協議を続けている。

 協議では、拉致問題を最重要とする日本に対し、北朝鮮は日本人遺骨問題を先行させたい意向で、せめぎ合いが続き、大きな進展はみられていない。

 その間、北朝鮮は、国連人権委員会で日本が拉致問題を取り上げたことや、日本の警察が在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)の議長宅を捜索したことを非難し、「このような状態では政府間協議もできなくなっている」とする通知文を送りつけてきた。

 拉致問題の解決を願う被害者家族らを翻弄するような「瀬戸際交渉」は、もうやめてもらいたい。

 日本政府が認定している拉致被害者は17人で、2002年に5人が帰国した。それから13年、「次こそ」と望みをつないでいる被害者家族の高齢化は進んでいる。

 昨年8月には、拉致被害者の父親が、息子との再会を果たせぬまま、99歳で息を引き取った。ほかにも、体調不安を抱える家族は少なくない。

 拉致が疑われる特定失踪者は約880人に上り、徳島県関係者も8人いる。昨年の再調査合意時、家族らは「成果を挙げてほしい」と期待していた。それだけに、報告延期に失望は大きいだろう。

 政府は対話継続を優先し、制裁強化という「交渉カード」は当面温存する方針だ。

 だが、これ以上、北朝鮮の通告を唯々諾々と受け入れるべきではないだろう。より圧力に重心を移すことも選択肢に、安否情報を開示するよう、北朝鮮に迫ってもらいたい。問題解決は一刻を争う。