2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアム、新国立競技場(東京都新宿区)の建設計画で、整備費を2520億円とする最終的な計画概要が承認された。

 昨年5月の基本設計から約900億円も増加した。開閉式屋根の設置は大会後に先送りしており、最終的には1100億円を超える増額となる見込みだ。

 ビジョンや財政的な裏付けがないまま、計画が進められていることに、大きな懸念を抱く。このままでは、新国立競技場が負の遺産となりかねない。

 新競技場は2本の巨大なアーチが特徴で、斬新なデザインだが、この難工事が整備費増額の大半を占める。

 一部の建築家は、アーチの建設を取りやめることで、整備費を引き下げる代替案を示している。一方、事業主体の日本スポーツ振興センターは、計画を大幅に見直すと間に合わないとしており、国は10月に着工する方針だ。

 見切り発車しても、国民の理解を得られるかは疑問だ。工法や経費節減に最大限の努力をしなければならない。

 財源のめどが立たないまま、なぜ建設計画がここまで進んだのか。

 総工費を1625億円と見積もっていた基本設計段階では、国と東京都、スポーツ振興くじ(サッカーくじ)に、それぞれ500億円ずつの負担を想定していた。

 だが、900億円近くも増えたため、文科省は、サッカーくじからの繰り入れ増額や民間資金で賄うことを検討している。

 あまりにも場当たり的ではないか。

 下村博文文科相は「明確な責任者がどこなのか、よく分からないまま来てしまった」と認めているが、それで済まされるものではない。

 民間資金では、命名権販売や寄付などで200億円を見込んでいるが、どこまで確保できるかは見通せない。

 東京都の舛添要一都知事は、都の負担分について態度を軟化させているが、都民の理解を得るのは容易ではあるまい。

 五輪後の維持管理費も膨大な額である。

 完成後50年間で必要な大規模修理費は1046億円で、昨年8月の試算から390億円増えた。一方、年間の運営収支の試算では3800万円の黒字だが、修繕費の積み立てを含めると赤字は避けられない状況だ。

 国民に無用の負担を押し付けてはならない。

 五輪スタジアムをめぐる日本の迷走ぶりを、世界はどうみているだろうか。日本の信用低下と、東京五輪のイメージダウンは免れない。

 大事なのは、56年ぶりに東京で開かれる五輪大会を成功させることである。

 選手や観客、国民にしわ寄せを及ぼしてはならないのは当然だ。しっかりとしたビジョンを持って取り組んでもらいたい。