政府がインドとの原子力協定交渉で、日本製原発の使用済み核燃料の再処理を認める方針を伝えた。日本が原発輸出国の立場で、軍事転用の恐れがあるプルトニウムを抽出できる再処理を容認するのは初めてだ。

 突然の方針転換に、驚きを禁じ得ない。日本は唯一の被爆国として、核兵器の惨禍を世界に伝えていく立場である。核軍縮・不拡散政策を掲げてきたはずではないか。

 まして、インドは核拡散防止条約(NPT)に加盟していない核保有国だ。1974年には、再処理で抽出したプルトニウムを使用して、初の核実験を行った国である。

 日本製原発でできるプルトニウムが核兵器に転用される恐れは十分ある。再処理を認めることは許されない。

 インドは2010年に始まった協定交渉で、再処理を認めるよう日本に要求した。

 政府内には慎重論もあったが、米国など他の原発輸出国の動向も踏まえて、再処理を容認したようだ。

 これまで日本は韓国、ベトナム、ヨルダン、ロシア、トルコ、アラブ首長国連邦の6カ国と協定を結んでいるが、日本製原発の使用済み核燃料の再処理を認めていない。

 インドとの協定が、次々と再処理に道を開くアリの一穴となってはならない。政府は考え直すべきだ。

 日本はインドの軍事転用に歯止めをかけるため、再処理で出るプルトニウムの量や所在を明記した「在庫目録」を毎年、提出するよう求めた。

 ところが、インドは「国際原子力機関(IAEA)と保障措置(査察)協定を結んでおり、転用の懸念はない」として拒否した。

 この言い分を額面通りには受け止められない。

 しかも、インドは、同様にNPTに加盟していない隣国のパキスタンと、対立関係にある。歴史的に根深いカシミール地方の帰属問題などをめぐり、過去に3度も戦火を交えているのだ。

 インドがプルトニウムを増産すれば、パキスタンを刺激するのは必至である。

 平和国家の日本が、南アジアの核軍拡競争をあおる事態を招けば、国際的な信用の面からもダメージが大きい。

 日本の原発メーカーが海外輸出に活路を求めたのは、11年の福島第1原発事故後、国内需要が見込めなくなったからだ。政府は14年に決定したエネルギー基本計画に「世界の原子力の平和利用に貢献していく」と明記し、輸出支援の姿勢を鮮明にしている。

 国内には三つの原発メーカーがあり、500社程度とされる部品メーカーが連なる。これら原発関連産業と技術を維持するために、なりふり構わないという姿勢は問題だ。

 今後、インドを含む中東・南アジアで原発の需要が増えると予想される中、中国も原発の輸出攻勢をかけるなど、国際競争は激化している。

 だが、輸出優先で交渉を進めては、将来に禍根を残す。