同和問題の解決に向けて、行政や教育、啓発活動に大きな影響を与えてきた同和対策審議会答申が出されてから、今年で50年を迎えた。

 しかし、いまだに偏見や差別意識がなくなったとは言い難い。節目の年を差別根絶への新たな出発点としたい。

 江戸時代の差別的身分が明治時代に廃止されてからも、特定の地区出身であることや、そこに住んでいることを理由にした不当な差別が続いているのが同和問題である。

 人々は生活環境や教育、結婚、職業選択など、あらゆる面で人権を侵害され、苦しめられてきた。

 答申は、首相の諮問機関である同和対策審議会によって、1965年8月に出された。「同和問題は最も深刻にして重大な社会問題であり、早急な解決は国の責務であるとともに国民的課題だ」と指摘している。

 国は時限立法として、69年の同和対策事業特別措置法を皮切りに、3度にわたり特措法を施行した。2002年に失効するまでの間、同和地区のインフラや住居など生活環境の改善に一定の成果を挙げたといえる。

 徳島県内でも多くの施策が実施されてきた。1990年代には県同和教育基本方針が策定され、県と全市町村で差別撤廃条例が制定された。

 2000年以降も、県は同和問題解決への基本方針や、人権教育・啓発に関する基本計画をまとめている。

 一方で、結婚差別などは全国的に後を絶たない。近年ではインターネット上の差別的な書き込みやヘイトスピーチも深刻な問題となっている。

 法務省の14年の人権侵犯事件統計によると、同和問題は140件に上っており、依然として差別意識は根深いと言わざるを得ない。

 特措法の失効後、行政上の同和対策は特別対策から一般対策に移行した。とはいえ、答申の精神は今も受け継がれており、差別解消への努力を怠ってはならない。

 県内では今年、同対審答申50年をテーマにした講演会が開かれているほか、同和問題の解決に取り組む団体が、自治体に要望書を提出するといった動きがみられる。

 県が15年前に行った同和地区実態把握調査では、結婚などへの差別意識が浮かび上がった。教育や啓発の実効性を高めていくためにも、あらためて県民意識を探る調査をしてはどうか。

 21世紀は「人権の世紀」といわれる。同和問題だけでなく、障害者や外国人、犯罪被害者、性的少数者など、さまざまな人たちへの差別が存在することが背景にある。

 全ての人の人権が尊重される社会を築くことが求められている。差別問題への理解を深め、決して人ごとではないという認識を共有することが大切だ。

 学校や職場、家庭、地域が連携しながら啓発の機会を持ち、差別意識を解消しなければならない。