米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題が、新たな局面を迎えた。

 前知事の名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を検証してきた沖縄県の有識者委員会が、手続きには「法律的な瑕疵(欠陥)が認められる」と指摘する報告書を、翁長雄志知事に提出した。

 報告書が瑕疵を認めた意味は重い。政府は海底ボーリング調査などを停止し、沖縄との話し合い解決に全力を注ぐべきだ。

 報告書は、埋め立ての必要性に「合理的な疑いがある」と指摘。埋め立てによる利益と不利益を比べ、適正で合理的な国土利用を求める公有水面埋立法の要件を満たさないと断じた。

 政府計画では環境保全措置が「適正に講じられているとも言い難い」と指摘、同法の「要件を充足していない」として法的瑕疵と判断した。

 辺野古移設阻止を目指す翁長氏は報告書を受けて「取り消しも含め、どのように対応するのが効果的か慎重に検討していきたい」と述べた。早ければ8月中にも承認取り消しに踏み切る方向だ。

 翁長氏が、承認取り消しという切り札を政府との交渉にどう生かすか、注目したい。

 一方、中谷元・防衛相は「十分に時間をかけて県から意見等を聴取する手続きを踏んでおり、法的に問題があると認識はしていない」と主張している。

 政府は今夏、埋め立て本体工事に着手する方針を崩しておらず、県に実施設計の文書を提出した。ボーリング調査の次の段階に移る構えだ。

 翁長氏が承認を取り消した場合には、政府は法的な対抗措置を取ってでも、移設作業を続けるとみられる。

 しかし、そうまでして移設を推し進めるのは、理解し難い。沖縄県の民意は、翁長氏が当選した知事選や、4小選挙区で自民党の公認候補が全敗した先の衆院選でも示されている。多くの県民は辺野古移設を望んでいない。

 共同通信社の全国世論調査でも「工事を中止し、県側とよく話し合うべきだ」との回答が48%で多数を占め、「県内への移設はやめるべきだ」も15%あった。「政府の方針通り移設を進めるべきだ」は35%にとどまっている。

 沖縄県議会は、辺野古沿岸部の埋め立てに使う土砂の県外からの搬入を規制する条例を可決した。工事阻止に向けて知事をバックアップする狙いがある。名護市の稲嶺進市長も翁長氏を支援している。

 それでも政府が埋め立てを行えば、沖縄との関係は修復し難いものになろう。

 安倍政権は、安全保障関連法案を衆院で強行採決し、世論の逆風を受けている。

 米軍基地が集中する沖縄には、有事の際、真っ先に危険にさらされる懸念もある。

 政府がそうではないというのなら、地元への丁寧な説明が必要だ。民意と乖離した政策の遂行を急げば、一層の政権不信を招くだろう。