岩手県矢巾町(やはばちょう)の中学2年の男子生徒がいじめを苦に自殺したとみられる問題で、男子生徒が通っていた中学校が、いじめが自殺の一因になったとの報告書を公表した。

 報告書は、いじめの存在を認めたものの、なぜ自殺を防げなかったのかという疑問を解消するには程遠く、不十分と言わざるを得ない。

 学校は、1~2年にかけて男子生徒へのいじめが6件あり、「判断できない事案もあわせ、積み重ねが苦痛を増大させた」と分析した。男子生徒の状況を担任教諭以外の教諭は知らされず、情報共有が不足し、危機意識も欠如していたと結論付けた。

 報告書は、いじめへの対応にミスがあったことを認めた。十分な対策を取っていれば、最悪の結果を防げたのではないか。残念でならない。

 男子生徒が担任教諭に提出していた「生活記録ノート」には、同級生との交友関係についての悩みが連ねられ、「づ(ず)っと暴力」「市(死)ぬ場所はきまってる」など、いじめや自殺を示唆する記述があった。

 ノートに何度も記した「SOS」に対して、担任教諭は把握しながら深刻に捉えていなかった。なぜ切実な訴えをきちんと受け止めることができなかったのか。反省しなければならない。

 矢巾町の教育長は「(いじめの)認知がなければ(防止の)成果が上がっているとの考えが学校や町教委にあった」と述べている。いじめを覆い隠して評価を得ようとするなどもってのほかだ。

 いじめに関わった生徒は、自らの行為が引き起こす結果を想像できなかったのか。警察の聴取などでは、事実関係をありのままに話してもらいたい。

 いじめが原因の子どもの自殺は、全国で繰り返し起きている。

 大津市の中学生自殺をきっかけに、2013年9月にいじめ防止対策推進法が施行され、さまざまな防止策が取られている。複数の教員と専門家を交えた組織の設置や、防止方針の策定などだ。

 報告書は、それらが十分に機能していないことを浮き彫りにした。文部科学省は、その原因を詳細に検証して、防止策が効果を上げるよう、早急に手だてを講じなければならない。

 徳島県内でも、いじめは深刻な問題だ。文科省が13年度に把握した県内小中高校のいじめ件数は、559件と前年から173件減少しているものの、依然として高水準にある。潜在的ないじめもあるとみられる。

 悲しい事件をこれ以上繰り返してはならない。いじめが取り返しがつかない不幸を生むことを、生徒一人一人が肝に銘じたい。

 現場の教員は、子どもと正面から向き合い、兆候を早期に把握して、対応することが欠かせない。家庭や地域でもいじめ根絶に取り組むことが大事だ。