沖縄県の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設問題で、政府は明日から来月9日まで1カ月間、関連工事を中断する。

 国と県の全面衝突の回避に向けて、集中的に協議するためだ。辺野古移設を「唯一の解決策」とする国と、これに反対する県が折り合いをつけるのは困難を極めようが、話し合うことには大きな意味がある。

 不信の連鎖を断ち切り、問題解決の糸口を見いだしてもらいたい。

 安倍晋三首相は7日、翁長雄志沖縄県知事と、東京で会談した。安倍氏は「角を突き合わせてきたが、話し合いの中で、できるだけ議論を深めてもらいたい」と要請。翁長氏は「(基地問題の)背景も話し合いたい」と応じた。

 翁長氏は沖縄振興費の確保などを柱とした要望書を提出し、安倍氏も「最大限努力する」と約束した。

 だが、振興費以外の着地点は全く見通せない。

 菅義偉官房長官は11日に沖縄を訪れ、翁長氏と協議を始める。

 集中協議は、国は菅氏をトップとする外務・防衛両省などのチーム、沖縄県は安慶田光男副知事が中心となり、5回程度開かれる。

 翁長氏は、戦後の沖縄の歴史や普天間飛行場建設の経緯、米軍の抑止力について話し合いたい意向だ。国と県の認識のずれを埋めるためには、問題を掘り下げた議論を行うことが重要だ。

 政府が夏の本体工事着手を事実上、先送りするのは譲歩と言えるが、話し合いに期限を設けるべきではない。

 翁長氏は、政府が作業を中断している間は、仲井真弘多前知事による辺野古沿岸部埋め立て承認の取り消しを、判断しない考えを示した。

 翁長氏は、有識者委員会から前知事による埋め立て承認に「法律的な瑕疵があった」とする報告書を受けて、近く埋め立て承認を取り消す方向とみられていた。

 国が対抗して、取り消しの効力を止める執行停止を申し立てて、本体工事を行えば、沖縄県民の反発は必至だ。

 そうなれば、国と県の関係修復は困難になる。将来に大きな禍根を残さないよう、協議で知恵を絞ることだ。

 国の海底ボーリング調査でサンゴ礁が傷ついた恐れがあるとして、県が求めた潜水調査も許可される。県が新たな材料を得る可能性もあろう。

 安倍政権が関連工事を中断する背景には、安全保障関連法案の国会審議を受けた内閣支持率の低下がある。戦後70年談話の発表などが重なる時期に、沖縄問題での一層のダメージは避けたいようだ。

 沖縄県には、話し合いを通じて世論を喚起し、国の譲歩を促すメリットがある。

 しかし、国が形ばかりの懐柔策を示し、工事を再開する事態になれば、時間稼ぎのそしりは免れまい。

 国と県は、協議で成果を挙げなければならない。