中国の通貨政策が世界の市場を揺るがした。

 中央銀行である中国人民銀行が、人民元の対ドル基準値を3日連続で切り下げた。切り下げ率は、合わせて4・5%に達した。

 ここ10年進めてきた元高誘導を転換し、輸出に追い風となる元安へと突然かじを切った格好である。

 中国は先月、金融緩和や規制強化により、株式市場の乱高下を招き、世界経済に大きな影響を及ぼしたばかりだ。その際も、収拾を図るため、取引を制限する強権的な措置を打ち出した。

 中国は世界第2位の経済大国であり、振る舞いは世界の株式や商品相場を左右する。そのことを自覚し、慎重な経済政策を進めてもらいたい。

 政策を転換したのは、減速する経済の立て直しが目的だろう。

 中国の成長のけん引役は輸出だが、先月は前年同月比8・3%減と2カ月ぶりにマイナスとなった。他の指標も軒並み低下している。輸出低迷が製造業を直撃し、株価や不動産価格の下落なども相まって、成長鈍化は想定以上のようだ。

 焦った中国は、なりふり構わず景気対策を打ったが、効果は薄く、元安誘導に追い込まれたとみられる。

 急激な元安は、中国にとって「もろ刃の剣」だ。巨額の対中赤字を抱える米国を刺激するだけではなく、国内資本の海外流出を加速させる懸念もある。

 中国からの安値での輸出に各国が対抗し、通貨安競争も起きかねない。

 実際、マレーシアやインドネシアは一時、アジア通貨危機以来の自国通貨の急落に見舞われた。ベトナムの中央銀行は通貨ドンの対ドル変動幅を拡大し、事実上のドン安誘導策に踏み込んだ。

 各国には、通貨安競争の激化を招かぬよう、冷静な対応を望みたい。

 中国は、為替相場を当局が管理する管理変動相場制をとっている。中国人民銀が毎朝、対ドル為替レートの基準値を発表しているが、詳細な算定方法は非公表だった。

 今回の切り下げは「前日の終値を参考にして基準値を決めるように変更したため」と中国は説明し、為替市場自由化の一環とした。

 だが、人民銀は「市場の変動が大きい時は有効に管理する」とも述べ、必要に応じて市場介入をする構えも見せている。今後の動きが、為替市場自由化への流れと合致しているかどうか、注視する必要がある。

 日本にとって、元安は大きな懸念材料だ。世界的にデフレ圧力が高まり、その結果、国内総生産(GDP)成長率を押し下げかねない。訪日中国人による「爆買い」の減退や、現地で事業展開する日系企業の利益に悪影響を与える可能性もある。

 政府は、中国の通貨政策に十分目配りをし、適切な対策を講じてもらいたい。