文民統制(シビリアンコントロール)は大丈夫なのか。そんな不安が拭えない。

 安全保障関連法案の成立を前提に、防衛省制服組の統合幕僚監部が自衛隊活動に関する内部資料を作成し、検討を始めていた。

 中谷元・防衛相は、事実関係を国会で追及されるまでの約3カ月間、資料の内容を把握していなかったという。

 文民統制は、政治が軍事に優越するという民主主義国家の基本原則だ。

 省庁が法案の成立を見越して準備をするのはよくあることだが、それと同列に見ることはできない。国の将来を左右する安全保障に関わる問題であり、多くの国民が懸念を抱いている法案だからだ。

 国会の審議では疑問点が次々と浮上し、政府は国民の理解を得られる説明ができていない。

 そうした中での資料作成、検討である。国会軽視も甚だしく、中谷氏の監督責任を厳しく問わなければなるまい。

 中谷氏は参院特別委員会で、法案の内容を隊員に周知するよう5月に指示し、統幕が資料を作ったと説明。「私の指示の範囲内のものだ」と釈明した。

 だが、先週には「国会の審議中に法案の内容を先取りすることは控えるべきだ」と答弁している。明らかに矛盾しており、大臣としての資質も疑われよう。

 内部資料は、国連平和維持活動(PKO)に関して、「駆け付け警護」が南スーダン派遣施設隊の業務に追加される可能性を明記している。

 駆け付け警護には、憲法が禁じる「海外での武力行使」につながる恐れや、隊員の危険が高まることへの懸念が根強い。集団的自衛権行使の是非論などに隠れて、国会でほとんど取り上げられていない論点でもある。

 資料はまた、中国が進出を図っている南シナ海で、情報収集や警戒監視、偵察活動を検討すると明記した。

 これらは、安保法案に書かれていない活動だ。中谷氏は「国会で南シナ海は課題だと数回以上、答弁している」と理解を示したが、法案が想定していない活動を自衛隊が独自に検討していいのか。明確な説明が求められる。

 さらに問題なのは、資料が法案の成立時期を「8月」、法施行を「2月ごろ」と記していたことだ。

 内部資料が作られた5月には、国会の会期延長は未定で6月24日が会期末だった。国会を無視していると批判されても仕方があるまい。

 中谷氏は、6月に「憲法をいかに法案に適合させていけばいいのか」と述べ、先月には、後方支援で核兵器の運搬も排除しないと答えるなど、論議を呼ぶ発言が目立つ。

 一連の問題から透けて見えるのは、巨大与党のおごりと「法案成立ありき」の姿勢である。

 参院は一層気を引き締めて、徹底審議に当たらなければならない。