中国天津市の化学物質倉庫で大規模爆発事故が発生してから、2週間近くになる。

 しかし、中国政府の情報統制により、何が爆発し、どんな汚染物質が流出したのかなど、詳しい状況はいまだによく分かっていない。

 情報隠しは事態の沈静化には逆効果だ。住民の不安と怒りは増している。中国当局は、事故や環境に関するデータを速やかに公開するべきだ。

 爆発は12日に発生し、120人を超す死者と大勢の行方不明者、負傷者を出した。火災通報で駆け付けた消防隊員が放水したところ、爆発した。衝撃で現場には直径100メートルの穴が開き、周辺の建物2万戸が損壊した。

 原因は、倉庫にあった金属ナトリウムに放水したためとみられる。金属ナトリウムは水と接触すると爆発的な反応を示すが、消防隊員は「知らなかった」と証言している。

 倉庫関係者と消防の連携欠如による初動対応の誤りが、被害の拡大を招いたのではないか。

 捜査当局は、原因究明を急ぎ、再発防止に役立てなければならない。

 疑問なのは、危険物を保管する倉庫の設置が、なぜ住宅街の中に認可されたのかということだ。

 背景には、企業と行政当局との癒着があると指摘されている。捜査当局は、国家安全生産監督管理総局の局長らを拘束し、取り調べている。局長は天津市元副市長で、倉庫を所有する企業と関係が深く、就任直後に化学薬品の取り扱いの規制を緩和した。

 不正があったとすれば、人命軽視も甚だしい。言語道断である。

 化学物質による環境汚染も気掛かりだ。

 倉庫には、規定を大幅に超える2500トン以上の化学物質が保管されていた。その中には、猛毒のシアン化ナトリウムなどがあったという。

 爆心地の穴の汚水からは、最大で基準値の800倍のシアン化ナトリウムが検出されている。周辺の空気からは高濃度の有毒な神経ガスが検出されたとの報道もある。

 中国政府は、住民の健康を守る措置を早急に講じる必要がある。

 現地で事業を展開する多くの日本企業も被害に遭っており、事業を再開していない企業も多い。スムーズに再開できるよう配慮を求めたい。

 現場近くの天津港は、上海港に次ぐ主要港だが、被害を受けて港湾機能がまひしている状態だ。物流の停滞で、各国の経済に影響が出る恐れもある。

 中国では今年1~6月に化学工場などの爆発事故が13件以上発生し、少なくとも54人が死亡しているという。22日には、山東省でも大規模爆発事故があった。

 相次ぐ事故は、経済を優先し、安全を軽視する中国政府の体質を浮き彫りにした。

 政府は、危険な化学物質の管理を徹底し、安全確保に全力を挙げるべきだ。