ロシアのメドベージェフ首相が、日本の度重なる中止要請を無視して、北方領土の択捉島を訪問した。

 日ロ関係の改善に水を差す行為であり、日本政府がロシアに抗議したのは当然だ。

 プーチン大統領の年内訪日に向け、今月末から来月初旬を軸に調整していた岸田文雄外相のロシア訪問を延期するのも、やむを得ない。

 安倍晋三首相は戦後70年を迎えて、北方領土問題解決とロシアとの平和条約締結に意欲を示している。

 大統領の年内訪日は日ロ首脳の合意事項であり、懸案処理と関係発展の弾みになると期待されている。それだけにロシアが挑発的な行動を取ったのは残念だ。

 たとえ、それが硬軟織り交ぜた外交手法の一つだとしても、日本との関係改善を先延ばしするのは得策ではない。

 メドベージェフ氏の北方領土訪問は3回目で、択捉島の「全ロシア青年教育フォーラム」に参加し、「択捉島と国後島に経済特区を創設する計画についてサハリン州の知事と協議した」と述べた。北方四島の経済発展を進め、実効支配を強める姿勢をあらためて示したようだ。

 択捉島では昨年、軍民共用の空港が完成し、住民の福利厚生施設も建設している。

 ロシア政府は、北方四島を含む千島列島の社会基盤を整備する「クリール諸島社会経済発展計画」(2016~25年)を決定し、インフラ整備に力を注ぐ構えだ。

 年内には、北方四島を含む極東の土地を、移住を希望する国民に1人1ヘクタールずつ無償分与する制度も始める。

 次々に実効支配が強化されるのは、日本にとって大きな懸念材料である。

 メドベージェフ氏はロシア人記者団に、北方四島は「ロシアの一部」で「今後も訪問するだろう」と述べた。国内世論を見据えているようだ。 ロシア経済が、ウクライナ情勢をめぐる欧米の制裁で悪化する中、プーチン政権は国民の不満を欧米への反感に巧みに転化させ、高い支持率を維持している。

 北方領土問題も例外ではないのだろう。

 しかし、ロシア経済を再び成長軌道に乗せるためには、極東開発が極めて重要だ。問題はそのパートナーがどの国になるかである。

 メドベージェフ氏は、外国からの投資に関し「一番乗りが利益を得るのが原則だ。日本の隣人でも、中国や韓国の友人でも良い」と述べ、日本をけん制した。

 だが、サハリン沖の液化天然ガス(LNG)生産のように、大規模開発では、日本企業の技術力が必要になろう。

 昨年11月の日ロ首脳会談では、北方領土問題を含む平和条約締結交渉をめぐり、双方が受け入れ可能な解決策を見いだす議論を進める方針を確認している。

 両国は資源開発などで協力関係を深め、相互理解に基づいて懸案解決を急ぎたい。