軍事衝突という最悪の事態は、ひとまず避けられることになった。

 韓国と北朝鮮が43時間に及ぶ高官会談で折り合い、「共同報道文」を発表した。

 注目されるのは、関係改善に向けた当局者会談を早期に開くとし、多様な分野での民間交流をうたったことだ。韓国の朴槿恵(パククネ)政権と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)体制が発足してから、こうした合意が交わされたのは初めてである。

 朝鮮半島の緊張緩和は、東アジアの平和と安定にとって最重要の課題だ。北朝鮮はこれまで何度も約束をほごにしており、楽観は禁物だが、対話の姿勢に転じたことは歓迎できる。

 双方が合意を誠実に履行し、民族和解の流れを確かなものにするよう求めたい。

 危機の発端は、軍事境界線に接する非武装地帯の韓国側で地雷が爆発し、韓国兵2人が脚を切断する重傷を負ったことだ。

 韓国は北朝鮮が地雷を埋めたと非難し、報復として、拡声器による北朝鮮への政治宣伝放送を始めた。

 これに反発した北朝鮮が砲撃し、韓国も反撃。北朝鮮は前線地帯に「準戦時状態」を宣言し、宣伝放送を中止しなければ「超強硬対応は避けられない」と迫っていた。

 共同報道文では、地雷爆発について北朝鮮が「遺憾」の意を表明し、韓国は宣伝放送を中断するとした。

 北朝鮮が遺憾や謝罪を示したのは過去に4回しかなく、自らの行為であることが明確な場合だけだった。地雷爆発の責任の所在を曖昧にした文面とはいえ、異例の譲歩といえよう。

 宣伝放送は金正恩第1書記を批判し、独裁体制の虚構を暴露する内容で、国民に聞かれるのがよほど嫌だったのだろう。北朝鮮は放送の中断と引き換えに、これまで消極的だった南北離散家族再会事業の実施も受け入れた。

 北朝鮮が軍事的な緊張を高めたのは、不安定な体制内部の結束固めに利用する思惑もあったとみられている。

 そうだとしても、対話のきっかけが生まれた意義は小さくない。南北間には現在、意思疎通のルートがなく、偶発的な衝突が不測の事態に発展する恐れがあるからだ。大切なのは、危機回避の仕組みを構築することである。

 北朝鮮は、韓国が2010年の海軍哨戒艦沈没への報復として始めた経済制裁の解除を望んでいるとされる。

 今後、会談が開かれた場合、制裁解除を話題に持ち出すとみられるが、まずは危機感をあおる「瀬戸際戦術」や、非人道的な国民抑圧政策を改める必要があることを肝に銘じるべきだ。

 東アジアの脅威となっている核・ミサイル開発を放棄し、日本人拉致問題の早期解決を図らなければならないことも言うまでもない。

 北朝鮮の変化を促すため、日本は米中韓など各国との連携を強めていきたい。