東京電力が福島第1原発の汚染水低減の抜本的対策の一つと位置付ける「サブドレン計画」で、原子炉建屋周辺の井戸から地下水のくみ上げが始まった。浄化設備で処理した後、海へ放出される。

 絶え間なく生まれる汚染水対策は、喫緊の課題である。計画を遅滞なく進めてもらいたい。

 国や東電は、漁業関係者が苦渋の決断で計画を容認したことを重く受け止め、漁業再生と風評被害の防止に、全力を挙げなければならない。

 建屋には、1日約300トンの地下水が流れ込み、放射性物質に触れて汚染水となっている。

 計画では、建屋を囲む約40本の井戸から地下水をくみ上げて、流入量を半分程度に減らす。専用の浄化装置を通して放射性物質の濃度を大幅に下げた後、海に流す。

 建屋近くで一度汚染された地下水だけに、放出に当たっては、基準値を下回っていることを厳格に確認する必要がある。万が一にも間違いは許されない。

 サブドレン計画では、波及効果も見込める。建屋周辺の地下水位の管理が可能になることで、護岸沿いに鋼管を打ち込んだ海側遮水壁の完成につながる。港に流出する汚染水を大幅に減らし、水質を改善する意味は大きい。

 ほかにも東電は、昨年5月から、山側の地下水をくみ上げて海に流す「地下水バイパス」も実施している。

 複合的な対策を講じ、汚染水の発生、流出を食い止めることが大切だ。

 もう一つ、東電に求められるのは、住民や漁業者の信頼を回復することである。

 2月には、汚染雨水が排水路から外洋に繰り返し流出していた事実を、東電が公表していなかったことが発覚。漁業者が反発し、サブドレン計画をめぐる協議が一時、中断した。

 東電は、原発をめぐる情報を隠すことなく逐一、公表しなければならない。

 福島県漁業協同組合連合会(県漁連)の野崎哲会長は計画容認について「安定的に廃炉を進めることが、福島県漁業の再開の一番の特効薬になると判断した」と述べた。

 福島県沿岸では、放射性物質を取り込みにくい魚種や海域を限定して試験操業を行っている。

 安全性を確保しながら、漁業再生に向けた取り組みを強めたい。

 ただ、汚染水対策はまだ道半ばだ。地上タンクには約70万トンもの水が保管されている。多核種除去設備(ALPS)で浄化した後も、放射性物質のトリチウムを取り除けないのが問題だ。

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は、ALPSで処理した水は希釈して海に放出すべきだとの考えを示した。一方、県漁連は、漁業者の理解を得ない限り、海に放出しないよう求めている。

 今後の処分の在り方に、知恵を絞らなければならない。