予想通りの結末に、がっかりした人は多いだろう。

 自民党総裁選は安倍晋三首相以外に立候補者がなく、無投票再選となった。

 選挙をせずに再選したのは、2001年の小泉純一郎元首相以来14年ぶりである。

 政権与党のトップの政策や政治姿勢は、国の行く末に大きく関わる。選挙戦になれば、公開討論などで多様な意見、主張を聞くことができた。そうした議論の機会がなくなったことは残念だ。

 かつての自民党には、さまざまな考えを受け入れる幅の広さ、懐の深さがあり、それが長期政権を可能にした要因といえる。翻って、今の自民党は安倍首相の「1強」状態で、自由に物が言えない雰囲気があるようだ。

 選挙戦は、そんなイメージを払拭する好機でもあった。国民にアピールする機会を失ったことは、党にとってもマイナスではないか。

 今回の総裁選から、地方票の比重が国会議員票と同じになった。全国で89万人余り、徳島県内では約8千人いる党員・党友の多くは、不満を抱いていよう。

 無投票再選は、強い者になびく党内の風潮をあらためて露呈したといえる。

 立候補を目指した野田聖子前総務会長は、20人の推薦人を確保できなかった。

 首相に逆らえば、閣僚や党役員人事で冷遇されると恐れる心理は理解できる。政権ビジョンを打ち出せなかった野田氏も、迫力を欠いていた。

 それにしても、衆参で400人余りに上る議員のうち、首相に表立って異を唱えられる人が20人に満たなかったというのは、情けない話だ。

 党執行部や各派閥は、野田氏に近い議員の切り崩しに奔走した。選挙戦になれば、大詰めを迎えている安全保障関連法案の国会審議に影響が出かねないというのが理由だ。

 党員・党友の地方票から、予想以上に「反安倍」票が出る事態を恐れたことも否定できない。

 しかし、総裁選の日程は執行部が決めたものである。法案審議を優先するなら、国会終了後に先送りする方策もあったはずだ。自ら審議に支障のある日程を組み、それを大義名分に立候補阻止に走るのは、道理に反すると言われても仕方あるまい。

 無投票の流れは、石破茂地方創生担当相ら有力候補が次々と首相の再選支持に回った時点で、ほぼ決まったといえる。今回は勝ち目がないとの判断や禅譲を狙う思惑があったようだが、挑戦もせずに次を期すようでは政権を担う気概が疑われよう。

 安倍首相は再選後、「党内で一致団結して臨んでいく」と語り、安保法案の成立に意欲を示した。

 形の上では無風となり、党内の異論は抑えられたものの、多くの国民が法案の成立に反対している状況は変わらない。首相には、数の力を頼む強引な手法を改め、謙虚な姿勢で臨むよう求めたい。