消費税率引き上げに伴う負担軽減策として、増税分を消費者に払い戻す還付制度の導入を、財務省が打ち出した。

 きのう開かれた与党税制協議会で提案し、自民、公明両党が本格的な議論を始めた。

 負担軽減策は、これまでの与党協議で、飲食料品などの税率を下げる軽減税率を導入することで合意している。与党は昨年の衆院選でも、2017年度からの導入を目指すとの共通公約を掲げていた。

 それをほごにして、問題が多い還付制度に切り替えることは、果たして国民の理解を得られるのか。与党は、軽減税率の導入に向けた協議を前に進めるべきだ。

 8%から10%への消費税率引き上げは、17年4月に実施される。

 財務省の還付制度案は、一律に10%を課した後に増税分のお金を払い戻す仕組みだ。対象は酒類を除く飲食料品で、外食も含む。

 購入額の把握には、来年1月に運用が始まるマイナンバー制度で希望者に配布される個人番号カードを活用する。レジなどでカードをかざすと、額に応じたポイントが加算され、銀行口座などにお金が振り込まれる仕組みだ。

 問題は、食料品などの小売店が、カードから情報を読み取るための端末を設置しなければならないことである。

 国費で一部を補助する案も検討されているが、小さな店には負担となる。使い方を習熟する時間もかかり、特に高齢の店主らは大変だろう。

 消費者も手間が増えそうだ。買い物にはカードを持って行かなければならず、忘れた場合、レシートを保管しておく必要がある。

 貴重なカードを他のカードと同じように持ち歩くのは危険であり、子どもに持たせれば紛失する恐れが高まる。

 マイナンバー制度が円滑に運用されるかどうかも、まだ見通せていない。

 年金情報の流出事件を見るまでもなく、漏えいを完全に遮断するのは難しい。商品の購入日時や場所などを国に把握されることに、抵抗を感じる国民も少なくなかろう。

 そもそも、負担軽減策には低所得者対策とともに、消費者の「痛税感」を和らげる狙いがある。買い控えで景気が冷え込むのを抑えるためだ。購入後に軽減分が戻るのでは効果が薄い。

 一方、軽減税率には、対象品目の線引きが難しいとの批判や、複数の税率が混在して事業者の事務負担が増えるといった懸念があり、与党協議が難航してきた。

 だが、還付制度のような煩雑なシステムはいらず、痛税感も緩和できる。欧州では生活必需品や文化などを対象に、長年にわたり採用され、広く定着している。

 還付制度は、システムの準備などで17年4月の増税時に間に合わない可能性があるという。それでは、あまりに不誠実だと言わざるを得ない。

 与党は、軽減税率導入の約束を守らなければならない。