内戦が続くシリアなどから流入する大量の難民が、欧州を揺さぶっている。

 欧州連合(EU)はもちろん、日本など国際社会を挙げて、難民の救済を急ぎたい。

 移動中に事故で死亡する難民も多く、人道問題である。 トルコの浜辺に流れ着いたシリア難民の3歳児の遺体写真は、世界に衝撃を与えた。

 オーストリアの高速道路では、保冷車から移民とみられる71人の遺体が見つかった。リビア沖でも、多くの移民を乗せた密航船が沈没した。

 地中海を渡って欧州諸国にたどり着いた難民や移民は今年、43万人を超えた。渡航中の事故による死者は約2700人に上る。憂慮すべき事態である。

 難民は、過激派組織「イスラム国」との戦闘が激化するシリアのほか、アフガニスタン、ソマリアなど政情が不安定な国から逃れてくる。中東やアフリカに近いイタリアやギリシャには多数の難民が流入し、対応に追われている。

 ギリシャからバルカン半島経由で難民が流れ込むハンガリーは対応が厳しく、セルビア国境沿いにフェンスを設置した。国境の村の難民収容施設では、警察官が動物に餌を与えるかのように食べ物の袋を放り投げる動画が公開され、波紋を広げている。

 難民の尊厳と人権を守る手だてを講じる必要がある。

 一方、基本法(憲法)で政治的迫害を受けた者の保護を定めているドイツは、メルケル首相が受け入れに寛容だ。 社会保障も充実していることから大量の難民が流入し、8月だけで約10万5千人に上った。だが、連立与党からも批判が出始めた。受け入れ場所の不足も深刻である。

 注目したいのは、欧州委員長の提案だ。難民12万人を各国が受け入れ分担し、緊急時に常時発動できる割り当て措置を制度化するのが柱。

 欧州委は5月に4万人の割り当てを提案したが、経済的負担を嫌う東欧諸国が分担義務化に反対し、自主的な取り組みにとどまった。

 問題を協議する14日の臨時内務・法務相理事会は難航が予想されるが、効果的な方策を見いだしてほしい。

 EUだけで解決できる問題ではない現状に、国際社会も理解を深めつつある。

 その契機となったのは、難民の男児の遺体写真だった。それまで、難民船を追い返すなどの強硬策を取ってきたオーストラリアは、一転して大量の難民を受け入れる姿勢を打ち出した。米国も難民の受け入れ枠を拡大する。

 フランスのオランド大統領は、難民をめぐる国際会議の開催を後押しする構えだ。

 日本の対応も問われる。昨年は5千件の難民認定の申請があったが、認定はわずか11件にとどまった。

 菅義偉官房長官は「住居や教育、保健、女性、子どもへの支援は日本の得意分野だ」と述べ、支援する意向だ。

 政府は早急に具体的な支援策を打ち出す必要があろう。