政府と沖縄県が法廷で全面対決するような異常事態は、避けなければならない。

 米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設問題で、翁長雄志知事が沿岸部埋め立て承認の取り消し手続きを始めると表明した。来月中にも正式に取り消す。

 中断していた移設関連作業を政府が再開したことに反発したものだ。政府も対抗措置を取るとみられ、法廷闘争に発展する可能性が高まった。

 両者は、先日までの集中協議で、新たな対話の枠組みを設けることで合意している。これを生かし、問題が泥沼化することを防ぐ方策を探るべきだ。

 会見で翁長氏は「日本全体で安全保障を考える気概も何もない。残念至極だ」と国を厳しく批判した。辺野古移設反対を訴え続けているにもかかわらず、代替案を検討しないことへのいらだちの表れだろう。

 それは沖縄県民の怒りでもある。思いをくみ取ろうとせず、自らの主張を繰り返す政府の姿勢は残念だ。

 取り消し手続きの開始は、県の有識者委員会が7月に翁長氏に提出した報告書に基づく。報告書は、仲井真弘多前知事の承認手続きに「法律的な瑕疵が認められる」と指摘している。

 承認が取り消されれば、政府は埋め立ての法的根拠を失う。県は、対抗策の「切り札」を出したといえる。

 これに対し、沖縄防衛局は国土交通相に不服申し立てを行うとみられ、取り消しを「無効」として、作業の続行を図る。作業が止まらなければ、県が訴訟を起こすことも考えられる。

 「法廷闘争やむなし」との認識は双方に広がりつつある。こうした事態を招いたことを、政府は重く受け止めなければならない。

 先月10日からの1カ月間、両者は集中協議を行ってきた。収穫は、対話の枠組みを新設し、米軍基地の負担軽減策や振興策の協議を継続するという合意だった。

 協議期間が終わり、県の潜水調査が終了した翌日、政府は作業を再開した。

 「協議継続」なら、作業を止めたまま行うのが筋だろう。強権的な国のやり方は、集中協議や合意は演出にすぎず、世論を意識したポーズだったと言わざるを得ない。

 県は、政府を翻意させるには「世論に頼るしかない」とみている。当初、承認取り消しを今月末の県議会で表明することを検討していたが、前倒ししたのはそのためだ。工事再開後すぐに対抗策を打ち出すことで「強行する国に立ち向かう沖縄」を広くアピールできると考えた。

 翁長氏は今月下旬、国連人権委員会に出席して辺野古移設反対を訴える。国際社会で注目を集め、日米両政府にプレッシャーをかける狙いだ。

 これ以上の混迷は、一層の政権不信を招くだけである。政府は、沖縄の思いに寄り添う努力をすべきだ。