企業が派遣を受け入れる期間の制限をなくす改正労働者派遣法が衆院で可決、成立した。30日に施行される。

 改正法により、派遣を利用する企業の自由度は大幅に増す。一方で、正社員になれずに派遣で働き続ける人が、「生涯派遣」で固定化されるとの懸念は拭えない。

 経済界の利益を優先する安倍政権の政策の一環だが、働く人を犠牲にするようなことがあってはならない。

 国会は、派遣の正社員化を促進する取り組みに最大限努力するよう国に求めるなど、約40項目に上る付帯決議も可決した。

 政府には労働者の権利を守る責任がある。付帯決議の趣旨をしっかりと受け止め、雇用環境の改善に努めなければならない。

 現行法は、通訳など26の専門業務の派遣期間を無制限とし、それ以外の一般業務は最長3年までとしている。

 改正法は専門、一般の業務区分をなくし、一律のルールで期間制限を撤廃。3年ごとに人を入れ替え、労働組合の意見を聞くなどすれば、派遣をずっと使えるようにする。

 政府は「正社員を望む人にはその道を開き、派遣を選ぶ人には待遇を改善する」と強調してきた。

 だが、改正法に盛り込まれた雇用安定措置に、実効性があるかどうかは疑わしい。同じ職場で3年働いた派遣労働者を、派遣先が雇うよう要請することなどを派遣会社に義務付けたが、断られればそれまでだ。

 これで、果たして正社員への道が開かれるのか。徳島県内の派遣労働者から「3年すれば切り捨てられ、新しい人が来るのでは」と、不安の声が上がるのは当然だ。

 派遣の使い勝手を良くしたいというのは、経済界が長年、求めてきたことである。しかし、経営状況の変化に応じて容易に人員調整できる派遣の増加は、雇用の不安定化を助長しかねない。

 成立から施行まで、20日足らずしかないことも問題だ。周知期間を減らしてまで施行を急ぐのは、違法派遣で働く人を社員などとして雇わなければならないという、企業に不利な制度が来月1日に始まるからだろう。

 期間制限をなくす改正法が施行されれば、違反となるリスクは急低下する。企業への手厚い配慮には驚かされる。

 対照的に、派遣労働者には冷淡だ。改正法に先立ち、派遣と正社員との賃金格差の是正に向けた議員立法「同一労働同一賃金推進法」が成立したが、当初案を自民、公明、維新3党が修正したため、骨抜きになってしまった。

 そもそも、派遣労働は臨時的・一時的に人員を補充するための制度である。低賃金で、将来の見通しを立てづらい不安定な雇用の常態化は、少子化対策にも逆行する。

 政府は施行後の雇用実態を厳しく検証し、改善が見られなければ、速やかに制度を見直す必要がある。