徳島県が、水素を燃料として走る燃料電池車の普及など、水素の活用戦略を本格化させている。
 
 水素の活用に向けた数値目標や県の施策などを盛り込んだ「県水素グリッド構想」では、燃料電池車を2025年に1700台、30年時点で3600台に増やす。このほか、バスを25年に10台、30年に20台にし、18年には高速バス・トラックへの導入を目指すとしている。
 
 飯泉嘉門知事が徳島における「水素元年」と位置付ける本年度は、燃料電池車5台を県公用車として導入する。また、県内事業者に補助金を出して、さらに5台を確保する予定だ。
 
 環境にやさしい燃料電池車を、県が率先して普及させようとする姿勢は評価したい。

 コストやインフラ整備など乗り越えなければならないハードルは高いものの、エネルギー自給率の低いわが国にとって、普及に取り組む価値は十分にある。環境に配慮した水素社会の実現へ向け、官民挙げて道を開きたい。
 
 燃料電池車は、水素と空気中の酸素を化学反応させて発生した電気でモーターを駆動させるため、走行中に二酸化炭素を一切排出しない。究極のエコカーともよばれる。

 ただ、難点は水素の補給場所が未整備なことだ。

 県は本年度内に、太陽光発電の電力から水素を生成するステーションを県庁に設けるのを皮切りに、25年に県内6カ所、30年には11カ所にまで増やす。

 政府は成長戦略の柱として水素の活用を挙げており、本年度内に100カ所の水素ステーションの整備を目指している。東京など4大都市圏での整備を想定しているが、都市部で広い土地を確保するのは容易ではない。

 それだけに、地方都市である徳島県が水素ステーション整備を推進する意義は大きい。関西圏と近いことも有利な条件だ。都市部を走る燃料電池車を徳島に呼び込むことで、地域経済の活性化につなげたい。

 各地域で水素をつくり、消費する地産地消を進めれば、水素輸送に伴う二酸化炭素排出を減らすこともできる。

 県内企業にも動きが表れた。産業用ガス販売の四国大陽日酸(徳島市)が、トレーラータイプの移動式水素ステーション1台を本年度内に稼働させる準備を進めている。

 ネックは導入コストの高さだ。水素ステーションは固定式で5億~6億円の費用を要する。四国大陽日酸が採用する移動式は約3億円で、国から1億8千万円の補助を受けるが、同社は「当面採算は取れないだろう」と厳しい見方を示す。

 水素の需要が拡大し、関連コストが下がるまでには、10年、20年単位の取り組みが必要となる。

 水素活用の先進県を目指す県は長期的な視点に立ち、水素ステーションの開設支援などの施策を続けてほしい。