日本の信用と2020年東京五輪のイメージが、大きく傷ついたことが残念である。

 五輪のメーンスタジアムとなる新国立競技場の整備をめぐる迷走は、世界に醜態をさらした。総工費が膨張した整備計画が白紙撤回に追い込まれ、膨大な労力と時間が空費されたのだ。

 それなのに、甘い責任の取り方で問題に幕が引かれようとしている。国民をばかにした話だと言わざるを得ない。

 問題を検証する文部科学省の第三者委員会は、下村博文文科相や事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)の河野一郎理事長らの監督責任を明記した報告書をまとめた。

 下村氏は安倍晋三首相に閣僚辞任を申し入れたが、慰留され、内閣改造まで務めるという。これでは、形ばかりの辞意だったと言われても仕方があるまい。首相は慰留すべきではなかった。

 下村氏は、今年4~9月の議員歳費を除く給与と賞与計約90万円の返納も決めた。

 河野氏は任期満了で退任となったが、白紙撤回前は再任が既定路線だった。事実上の引責辞任といえる。

 河野氏と8月に退任した山中伸一・前文科事務次官は、それぞれ給与の10分の1、2カ月分の返納となった。

 しかし、彼らに責任を負わせて済む問題だとは思えない。背景には組織的な欠陥があるはずだ。
 競技場の総工費は12年にデザインを国際公募した際、1300億円の想定だった。それが二転三転し、最終的には、関連工事費などを含めて2651億円に膨らんだ。

 7月になり、ようやく安倍首相が「白紙に戻す」と表明し、新整備計画の総工費の上限を1550億円と定めた。

 報告書は、高度な技術を要する国家的プロジェクトに対して、JSCや文科省が「建築の専門家や国土交通省と十分に連携せずに、既存の組織拡充で対処しようとした」と批判した。そして「足りなければ他の財源に期待するという当事者意識の希薄化につながった」と指摘した。

 総工費の積算根拠について報告書は詰め切れず、誰がどの時点で対応を誤ったかの詳しい検証は不十分だった。

 ただ、注目すべき指摘もある。森喜朗元首相ら旧計画を了承したJSCの有識者会議について「メンバーが重鎮ぞろいで、実質的に重要事項の承認機関となっていた。JSCの意思決定を遅らせた」と問題視したのだ。

 下村氏は聞き取り調査に、「有識者会議でまとまったことに対し、文科省から駄目とは言えなかった」と述べた。それなら、森氏は責任を免れまい。

 東京五輪は、シンボルマークの公式エンブレムが白紙撤回となるなど、失態続きだ。

 信用を回復するためには、優れた新競技場を建設し、世界の選手らの期待に応えるほかはない。組織体制を刷新して再出発すべきだ。