今年のノーベル医学生理学賞が、アフリカなどの寄生虫による感染症に劇的な治療効果を挙げている薬剤「イベルメクチン」を開発した、北里大の大村智・特別栄誉教授に贈られることが決まった。

 米国の男性研究者との共同受賞で、中国の女性研究者も受賞する。

 日本人がノーベル賞を受けるのは、青色発光ダイオード(LED)を開発した米カリフォルニア大サンタバーバラ校の中村修二教授(徳島大大学院修了)ら3人が物理学賞を受けた昨年に続いて2年連続で、計23人となった。

 医学生理学賞は、2012年に人工多能性幹細胞(iPS細胞)の開発で受賞した山中伸弥・京都大教授以来3年ぶり、3人目である。

 日本の科学のレベルの高さを証明するものであり、地道に研究に取り組む若者の励みにもなろう。最高の栄誉に輝いた快挙を心から喜びたい。

 大村氏が開発したイベルメクチンは、線虫類やダニなどの寄生虫に大きな効果を発揮し、初めは動物用の薬として普及した。

 人にも有効なことが判明し、重症の場合は失明することもある熱帯病のオンコセルカ症(河川盲目症)や、リンパ系フィラリア症(象皮症)の特効薬として、年間3億人が使っているという。

 その威力は強く、いずれの感染症も20年代に撲滅できると、世界保健機関(WHO)が見込んでいるほどだ。日本でもダニが原因の疥癬症や、沖縄に多い糞線虫症などの治療に役立っている。
 アフリカや南アジア、中南米など、貧しい地域の人々の命を救う発明であり、高く評価されたのは当然である。

 偉業のきっかけは、40年以上前にさかのぼる。1970年代、微生物の力に着目していた大村氏が、日本のゴルフ場の土壌で見つけた細菌の作る物質が寄生虫に効果があることを発見。これを基に、73年から米国の会社と共同研究し、開発に成功した。

 大村氏は「何か一つでも人のためになることはできないか、いつも考えてきた」と語っている。
 微生物という目に見えない生き物の力を引き出し、大きな成果を生みだしたのは、未知の世界を知ろうとする探究心とともに、人類に貢献したいという強い思いがあったからに違いない。

 それは昨年受賞した中村氏や、3年前の山中氏らにも通じることだ。いずれも発明が実用に結びついた例だが、基礎研究の積み重ねがなければ、到底なし得なかった発見である点も共通している。

 残念なのは、若い人たちの理科離れが進んでいることだ。今年の全国学力テストで「理科が好き」と答えた中学生の割合は62%と、3年前より20ポイントも減少している。

 今回の受賞決定を機に、子どもたちがもっと理科に興味を持つようになれば喜ばしい。多くの若者が大村氏に続いてもらいたい。