第3次安倍改造内閣と自民党役員人事からは、来年夏の参院選に向けて、政権浮揚を図る狙いが読み取れる。

 多くの国民の反対を押し切って安全保障関連法を成立させた安倍晋三首相は、女性の登用や「1億総活躍担当相」の新設などで、支持を呼び戻す工夫を凝らしたようだ。

 だが、改造のインパクトはいまひとつで新味に乏しい。

 首相は会見で「未来へ挑戦する内閣だ。誰もが今よりももう一歩前に踏み出すことができる社会をつくる」と決意を示した。どのように実現するのか、注視したい。

 首相は19人の閣僚のうち、本県選出の山口俊一沖縄北方兼科学技術担当相ら10人を交代させたが、麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官ら主な閣僚は変えなかった。

 安定を重視し、新閣僚による「政治とカネ」の不祥事をできる限り抑えようとする守りの姿勢がうかがえる。

 「女性の活躍推進」を看板政策に掲げる首相は、女性閣僚を1人減らしたが、3人は確保した。当選2回の丸川珠代参院議員を環境相に抜てきし、清新さをアピールした。

 新設の1億総活躍担当相には、加藤勝信官房副長官を充てた。国民会議を設けて「日本1億総活躍プラン」を策定するが、従来の政策とどう違うのか。看板倒れにならないか心配だ。

 行政改革担当相には、「無駄撲滅」を主導し、妥協のない改革姿勢で知られる河野太郎・党行革推進本部長が就いた。その手腕に注目したい。

 首相は派閥に一定の配慮をし、党内融和も図った。9人を初入閣させたのは、入閣待機組の不満解消策だろう。

 派閥を結成し、首相後継を目指す石破茂地方創生担当相は引き続き閣内で処遇した。

 党役員人事では、谷垣禎一幹事長、二階俊博総務会長ら4役と、高村正彦副総裁を続投させた。総裁選で首相の再選を支持した派閥領袖クラスへの論功行賞ともいえる。

 内閣、党の骨格が変わらないだけに、改造の成否は新閣僚の働きぶりが鍵を握る。

 大筋合意した環太平洋連携協定(TPP)への対応も急務だ。党のTPP対策をリードしてきた森山裕衆院議員は農相として、国内農業の強化策に迫られる。

 沖縄県の米軍普天間飛行場の辺野古移設問題も、大きな火種である。埋め立てに踏み切れば、再び強権的体質が非難されよう。沖縄県選出の島尻安伊子参院議員を、振興策を担う沖縄北方担当相に起用したのは地元への配慮だろうが、前途は容易ではない。

 看板政策のアベノミクスは苦境にある。株式市場は低迷し、日銀の先月の企業短期経済観測調査は、代表的指標の大企業製造業が不振だった。

 安倍政権は、新たな三本の矢として「強い経済」「子育て支援」「社会保障」を掲げたが、言葉だけが躍っている印象は拭えない。

 首相には、謙虚な姿勢と国民目線の政権運営を求める。