三好市の大歩危・祖谷地域を訪れる外国人観光客数が飛躍的に伸びている。

 全国でインバウンド(訪日外国人旅行者)の誘致合戦が繰り広げられる中、官民一体となった取り組みで実績を挙げているようだ。そこからは地方への外国人誘客のヒントが見えてくる。

 渓谷美と温泉が人気の同地域は中四国では有名だが、2000年ごろまでは全国的な知名度は高くなく、外国人を見掛けることはまれだった。

 だが、市内の主要5ホテルに宿泊した外国人は07年の546人から、昨年は11倍の6186人に増えている。今年も上半期だけで4206人に上っており、年間8千人を超えそうだ。

 その原動力となっているのが、00年に5ホテルで設立した「大歩危・祖谷いってみる会」である。注目すべきは、商売敵であるホテル同士が、ホテルの名前は二の次に地域を売り込んでいることだ。

 勉強会を開いて誘客の戦略を練ったり、パンフレットや土産袋に共通ロゴマークを入れてPRしたりする一方、各ホテルがサービスを競い、切磋琢磨することで魅力アップを図っている。同業者連携のモデルケースといえよう。

 際立つのは着眼点の良さだ。中国や台湾からの誘客に力を入れる観光地が多い中、いってみる会は香港に狙いを定め、ずばり当たった。昨年の5ホテルの外国人宿泊者数を国・地域別に見ると、香港がトップで3175人と全体の半数以上を占めている。

 香港は人であふれ、緑が少ない。香港にないものが大歩危・祖谷地域にはある。しかも裕福な家庭が多い。これに目を付けたわけだ。

 「にし阿波観光圏協議会」を構成する県西部4市町の官民による積極的なセールスも奏功している。

 旅行会社へは市や県の担当者が同行し、官民共同で売り込んでいる。行政が後ろ盾になることで信頼が得られ、熱意が伝わりやすいという。イベント企画をはじめパンフレットの作製、観光施設の割引など、施策や資金面でも行政が推進力となっている。

 外国人客が増えるにつれて、地域にも受け入れの機運が高まってきた。バス会社が停留所の多言語表示や巡回バスの試験運行を始めており、台湾人を雇用した観光施設もある。こうした取り組みが、さらに外国人誘客を後押しすることになろう。

 課題はリピーターを増やすことだ。そのためには、地域の魅力をもっと高める必要がある。

 方策の一つとして、古民家や空き家の活用が考えられる。長期間滞在し、秘境を堪能してもらうのもいいのではないか。

 折しも、三好市を含む地域が国から外国人向け広域観光周遊ルートに認定され、大歩危は天然記念物と名勝に指定された。こうした追い風を利用し、地域一体となってブランド力を高めてもらいたい。