沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立て承認を正式に取り消した。承認に瑕疵(かし)があるというのが理由だ。

 これに対して政府は、行政不服審査法に基づき、審査請求と取消処分の効力停止を、国土交通相に申し立てる構えである。

 県が一度行った埋め立て承認を取り消すのも異例なら、政府が法的な対抗措置を講じるのも極めて異例のことだ。

 両者の攻防は法廷に持ち込まれる可能性が高く、全面対決の様相を呈してきた。

 対立が泥沼化すれば、世界一危険といわれる普天間飛行場の固定化が現実味を帯びてくる。そんな最悪の事態は、何としても避けなければならない。

 取り消された埋め立て承認は、仲井真弘多(なかいまひろかず)前知事が2年前に判断したものだ。翁長氏はこれについて、沖縄防衛局に提出した通知書で、主に2点の瑕疵を挙げた。

 一つは、政府が普天間飛行場を沖縄県内に移設する理由を「地理的に優位」などとした点で、「時間、距離その他の根拠が何ら示されていない」と指摘した。

 もう一つが環境面への影響である。通知書は、埋め立て計画について「環境保全措置が適切に講じられているとも、その程度が十分とも言えない」とした。

 政府は「承認に法的瑕疵はなく、取り消しは違法」としているが、なぜ辺野古が地理的に優位といえるのか、明確に説明する必要がある。

 環境面では、前知事の判断を検証した沖縄県の有識者委員会も7月、国や県の「生物多様性戦略」に反している可能性が高いとの報告書を出している。政府は、こうした疑問にも真摯に答えなければならない。

 政府と県は8~9月に集中協議を行い、融和を図る機運も出ていた。それがここまでこじれたのは、沖縄の民意をくみ取ろうとしない政府側に責任があるといえよう。

 集中協議で政府は、「辺野古が唯一の解決策」という主張を変えなかった。これでは、歩み寄りの糸口など見つかるまい。

 翁長氏は記者会見で、一連の協議を振り返り「内閣の姿勢として、県民に寄り添って解決したいという思いは非常に薄い」と厳しく批判した。

 承認取り消しという非常手段に出た背景には、戦後70年もの間、基地の存在に苦しむ県民の悲痛な思いがある。やむにやまれぬ決断である。

 国土面積の0・6%しかない沖縄県に、在日米軍専用施設の約74%が集中している現状は、あまりに酷と言わざるを得ない。

 政府は対抗措置を講じた後、今秋にも本体工事に着手する方針だが、強引に推し進めるのではなく、沖縄の声に耳を傾けるべきだ。

 辺野古以外の選択肢も視野に、計画を再考することが解決の近道ではないか。