農畜産物を輸出しようとする動きが、徳島県内で活発になってきた。

 JA全農とくしまは、米国での県産コメの試験販売を経て本格輸出を計画。県内の肉牛生産者でつくる「にし阿波ビーフ」(東みよし町)も、ブランド牛肉の米輸出を目指して準備を進めている。

 背景にあるのが、環太平洋連携協定(TPP)だ。発効すれば、農産品の輸出入の垣根が一気に下がり、安い輸入品との競争にさらされる。高い関税で保護されてきた日本の農業への影響は大きい。

 だが、逆手に取れば農産品を海外に売り込む好機にもなる。和食ブームを生かし、農業をブランド力と競争力の高い産業に育てていくことが大切だ。

 全農とくしまが狙うのは主に米国である。今年1月、米東海岸のスーパーで県産コシヒカリ120キロを試験販売し、完売した。手応えをつかんだことで、来年1月には西海岸でも試験販売し、本格輸出につなげる考えだ。

 TPPにより、日本は米国に5万トン、オーストラリアに6千トンのコメの輸入枠をそれぞれ設定した。枠は段階的に拡大し、協定発効後13年目には両国合わせて7万8千トンになる。現在の輸入枠は77万トンのため、輸入されるコメが約1割増えることになる。

 一方で、国内のコメ消費量は、食の欧米化などに伴って年間約8万トンのペースで減り続けている。このままでは、国内のコメ作りが危機的状態に陥るのは明らかだ。

 全農とくしまは既に英国やシンガポール、台湾に県産コメを輸出しているが、3億人超の人口を抱える巨大市場の米国に進出するメリットは大きい。ニーズや効果を見極め、実現にこぎ着けてもらいたい。

 にし阿波ビーフも、高度な衛生条件が求められる米国輸出に向けて施設を整備する計画だ。米国向け牛肉は、TPP発効後に年3千トンの無関税枠を設定、15年後には関税が撤廃される。輸出拡大を目指す事業者にとって、商機が大きく広がる。

 JA東とくしま(小松島市)は、輸入オレンジと競合する可能性がある勝浦町特産の貯蔵ミカンを、フランスと英国に初めて輸出する。ドイツで開かれた食品見本市で、現地業者との間で商談が成立したためだ。

 安倍晋三首相はTPPの大筋合意を受けて「『守る』農業から『攻め』の農業に転換する」と述べた。農業を成長産業と位置付け、生産性の高い「もうかる農業」を実現させる方針に異論はない。

 ただ、忘れてはならないのは、TPPによって打撃を受ける農家が少なからず出てくる恐れがあることだ。県内からも「衰退に拍車が掛かるのでは」と懸念する声が相次いでいる。

 ブランド化などで競争力を高める「攻め」とともに、農家に配慮した「守り」が重要なのは言うまでもない。