横浜市のマンションが傾き、くい打ち工事のデータ改ざんが発覚した問題で、旭化成建材が過去10年間にくい打ちを手掛けた3040件に関する内容を、親会社の旭化成が国土交通省に報告した。

 マンションに限らず学校や病院、工場、ショッピングモールなどさまざまで、所在地は全国に広がっている。

 徳島県内にも、徳島市の県営住宅など19件があった。住民や関係者の不安は小さくないだろう。

 3040件のうち、データを改ざんした現場管理担当者が関与したのは41件で、関東やその周辺に集中している。しかし、他にも同様の不正があるのではないかとの疑いは拭い切れない。

 旭化成はデータ改ざんや不具合の有無を徹底的に調べ、早急に公表して、不安の解消に努めなければならない。

 問題は業界全体の信用に関わることでもある。調査の効率を高め、客観性と透明性を確保するためにも、事業主や施工主などは積極的に協力してもらいたい。

 建物の調査とともに急がれるのは、不正が起きた原因の究明と、再発防止に向けた取り組みである。

 傾斜したマンションでは、8本のくいが強固な地盤に届いていなかったり、打つ深さが不足したりしていた。くいの根固めに使うセメント量の改ざんも見つかり、別棟を合わせると、くいのデータ改ざんは計70本にも上る。

 現場管理者はミスを隠すために改ざんしたと話しているようだが、犯罪に近い行為である。

 打ち込み不足のくいの工事は、全て工期終盤に集中していた。品質や安全より、納期やコストを優先させていたとしたら断じて許されない。

 まずは、従業員個人の倫理が厳しく問われるところだが、企業の教育は十分だったのか。無理な発注や行き過ぎた利益優先など、企業、業界に構造的な問題はなかったのか。あらためて検証する必要がある。

 不正を見抜けなかったチェック体制の甘さも指摘されている。

 くい打ち工事の場合、施工主側の工事監理者が常に現場で見守るケースは少ない。自治体や民間検査機関が行う検査も、施工時の写真や監理者らへの聞き取りによる事後確認にとどまるのが現状だ。

 チェック体制をめぐっては、業界団体の日本建設業連合会が、強化に向けた指針作成に乗り出す。監理者が頻繁に立ち会い、複数の目で点検するなど、実効性のある方策を打ち出してほしい。

 行政の検査体制の見直しも欠かせない。不正を見逃さない仕組みづくりへ、知恵を絞ってもらいたい。

 問題の収束までには、長い時間がかかるとみられる。徳島県はマンションに住む人や所有者を対象に、相談窓口を開設した。各自治体には、住民に寄り添った対応が求められる。