四国電力伊方原発3号機の再稼働に、愛媛県の中村時広知事が同意した。

 伊方町長や町議会、県議会は既に同意しており、これで地元同意の手続きは終了したことになる。

 しかし、安全性に対する不安は根強く、住民の多くが再稼働に反対している。周辺地域の避難計画も十分ではなく、再稼働に向けた環境は整っていない。知事の同意は、拙速と言わざるを得ない。

 同意の判断に際し、中村知事がこだわったのは、過酷事故が起きた場合の国の責任である。

 求めに対し、安倍晋三首相は今月、政府の原子力会議で「事故があった場合は政府として責任を持って対処する」と表明した。

 再稼働を推進する国が、責任を負うのは当然である。だが、過酷事故が起きれば取り返しがつかないことになるのは、東京電力福島第1原発の事故を見ても明らかだ。国は、どんな責任を取れるというのか。

 知事が同意した前提には、原子力規制委員会による新規制基準の「合格」があるが、規制委は「絶対安全とは言い切れない」と強調している。新基準そのものが、欧米の基準より劣ると指摘する専門家もいる。

 住民の避難ルートも確保されているとはいえない。

 伊方原発は、佐田岬半島の付け根にあり、半島には約5千人が住んでいる。過酷事故の際に、原発の近くを通って避難することは困難だ。

 計画では、船などで大分県側に避難するとしているが、天候が悪ければ、それも難しい。シェルター施設の収容人員も不足している。解決しなければならない課題は多い。

 愛媛県と伊方町の同意だけで地元のお墨付きが得られたとするのも問題である。

 30キロ圏内の自治体に避難計画の策定が義務付けられているのは、放射性物質が飛散する恐れがあるためだ。

 それなのに、自治体や住民の同意を得なくてもいいのだろうか。

 知事は会見で「原子力の代替エネルギーが見つかるまで、最先端の安全対策を施す中で付き合っていかざるを得ない」との見解を示した。ただ、電力需給には余裕があり、原発がなければ困る状況ではない。

 忘れてはならないのは、再稼働に疑問を持つ住民が少なくないことだ。

 愛媛新聞社が今年2~3月、県民を対象に行った世論調査では、反対が69・3%に上った。30キロ圏内にある宇和島、西予両市の市議や地元団体の代表者らを対象にしたアンケートでも、反対が過半数を占めている。

 規制委は、機器の詳細設計認可などの審査をしており、再稼働は、早くて年明け以降とみられる。

 しかし、「安全・安心」の大前提をおろそかにしたままでは、住民の不安を払拭することなどできないだろう。