佐那河内村に建設が計画されている広域ごみ処理施設をめぐり、原仁志村長の辞職に伴って行われた出直し村長選は、新人で元JA徳島市八万支所長の岩城福治(よしじ)氏が原氏を僅差で破り、初当選した。

 反対運動が起きるなど混乱を招いた建設計画は、白紙撤回を訴えた岩城氏の当選で仕切り直しとなる。

 岩城氏は、施設を建設するかどうかは「住民と話し合って決める」との考えを示している。問題の解決に向け、建設計画について村民に説明を尽くし、合意形成を図ってもらいたい。

 岩城氏が当選したのは、原氏の計画の進め方に対する村民の不満の表れといえる。

 県東部7市町村によるごみ処理施設の計画は水面下で話し合われ、村が建設候補地となったことは昨年10月、徳島新聞の報道で初めて村民の知るところとなった。

 村は徹底したごみの分別で経費を削減し、浮いた予算を乳幼児医療費に充てる取り組みで環境省の表彰を受けたこともある。

 ごみ減量に努めてきた村民にとって、村の排出量の375倍ものごみを燃やす施設の計画を、村が何も知らせずに進めていたことは背信行為に等しいものだ。

 こうしたやり方を、岩城氏は「賛否が割れる混乱の元をつくった」と厳しく突き、原氏への批判票を取り込んだ。

 さらに、計画に反対する2団体に擁立されながら、反対ではなく白紙撤回を主張。村民の意向を尊重する姿勢が共感を呼んだといえる。

 敗れた原氏は「広域行政なくして村の存続はない。村が合併せずに単独で生き残っていくための苦しい選択が、今回の計画だ」とし、施設の受け入れに理解を求めた。しかし、村民の原氏への不信感は根強く、訴えは十分に浸透しなかったようだ。

 岩城氏がまず取り組まなければならないのは、住民の意見集約へ道筋を付けることである。

 住民投票などが想定されるが、どんな手法を取るにせよ、徹底した情報開示が必要なことは言うまでもない。

 施設建設のメリット、デメリットは何か、環境への影響はないのか。具体的な判断材料を、分かりやすく村民に提示する必要がある。

 一方、岩城氏の主張からは、村をどう運営していくかが見えてこなかった。

 村は、し尿処理を小松島市内で行い、介護認定事務を勝浦町に委託している。常備消防がなく、消防と救急は徳島市に協力を働き掛けている。

 小さな村を運営していくには、広域行政を避けては通れない。岩城氏も広域行政の必要性を認めてはいるものの、村が担うべき役割を示していない。

 人口減少、財政難の時代にあって、村を取り巻く環境は極めて厳しい。そうした中、どのような村づくりをしていくのか。しっかりしたビジョンを描くことが求められる。