半世紀以上にわたる軍の政治支配に終わりを告げる、歴史的な転換点となりそうだ。

 ミャンマーで、2011年の民政移管後初めての総選挙が行われ、アウン・サン・スー・チー氏率いる野党、国民民主連盟(NLD)が勝利した。軍系の与党、連邦団結発展党(USDP)から第1党の座を奪うのはほぼ確実で、政権交代を視野に入れた情勢となっている。

 来年2月にも招集される新国会でNLDが主導し、大統領の選出投票が行われる。

 現政権は政治や経済の改革の成果を訴えたが、国民の軍への拒否反応はそれを大きく上回った形だ。民主化を加速させるNLDの躍進を歓迎したい。

 総選挙は、上院(定数224)と下院(440)のうち、国軍司令官が指名する166の軍人議席と、治安上の理由で投票が中止となった下院の7議席を除く491議席を対象に行われた。

 NLDが上下両院で議席数を大幅に伸ばす一方で、USDPは党首代行が落選するなど惨敗した。

 1990年の総選挙では、NLDが圧勝したにもかかわらず、軍事政権は結果を無視し、権力を保持し続けた。そんな強権発動はもう許されない。USDPや軍は、選挙結果を受け入れて、権力を移譲しなければならない。

 NLD主導の政権となっても、国政の実権を誰が持つのかは不透明だ。

 大統領は上下両院の全員投票で選ばれるが、スー・チー氏は息子が外国籍のため、憲法上、大統領になる資格がない。だが、「私は大統領より上の存在になる」と述べ、実権へ意欲を示している。

 リーダーに固執するスー・チー氏の姿勢は、批判を招く可能性がある。謙虚な姿勢で臨み、国民の期待に応えるよう求めたい。

 ミャンマーが民主化をさらに進めるための課題の一つが、憲法の改正である。

 上下両院の軍人枠や、外国人の家族を持つ者の大統領資格を認めないなど、非民主的な条項がある。改正には議員の4分の3以上の賛成が必要なため、軍人議員の賛同が欠かせない。

 NLDは改憲への機運を高め、民主化を目指す他の政党と連携を深めて、着実に歩みを進めてほしい。

 もう一つの課題が、少数武装民族との和解だ。総選挙では、国軍との戦闘の影響で、一部の選挙区で投票が中止になったほか、イスラム系少数民族ロヒンギャを中心に数十万人が投票権を剥奪された。

 少数民族の権利を保障し、参政権を与える選挙改革などを通じて、国内融和を図ることが大切だ。

 ミャンマーは豊富な資源と人口を抱え、「アジア最後のフロンティア」として注目を集める。

 戦前から関係の深い日本は、経済面だけでなく、民主化の後押しも積極的に行っていきたい。