NHKの報道番組「クローズアップ現代」でやらせがあったとされる問題で、放送倫理・番組向上機構(BPO)が、NHKを厳重注意した総務省と事情聴取した自民党を「圧力そのもの」などと厳しく批判した。

 BPOが政府、与党を批判するのは極めて異例のことだ。近年、メディアへの干渉が強まっており、警鐘を鳴らすのは当然である。放送に権力が不当に介入することがあってはならない。

 BPOは意見書で、高市早苗総務相が厳重注意した対応について「政府が個別の番組に介入することは許されない」とし、NHK幹部を呼び出して説明を求めた自民党を「政権党による圧力」と非難した。

 BPOは、言論・表現の自由の確保や、放送による人権侵害の被害救済などを目的に、NHKと民放が2003年に設立した第三者機関である。自律を基本とし、問題のある番組を放送した局に改善勧告などをしてきた。

 自民党内には、任意団体のBPOを法定の機関に改組する構想も持ち上がっている。

 政府や自民党がよりどころとするのは、放送法4条が規定している「政治的に公平」や「事実を曲げない報道」である。

 しかし、そもそも放送法は、国家が放送に干渉した戦前の反省に立って、放送の自由をうたったものだ。4条は努力義務であり、条文違反を理由にした処分は表現の自由を保障している憲法に違反するというのが、法学界の通説である。

 放送法を番組内容の規制に利用することは断じて許されない。行政処分やNHK予算の否認をちらつかせるかのような行為は、まさに「権力のおごり」の表れである。

 だが、谷垣禎一幹事長は、今後、同様の問題があれば「来てもらって実情を聴くことはある」と述べた。

 安倍晋三首相は昨年11月、アベノミクスに批判的な「街の声」を選んでいるとテレビ局を批判した。今年6月には、自民党の勉強会で議員が「マスコミを懲らしめるには広告収入をなくせばいい」と発言している。

 根底には、表現の自由を軽視する体質があるのではないか。言論封殺につながるような動きは、民主主義の根幹を揺るがすものだ。

 BPOは、NHKに対しても厳しい言葉を並べた。

 番組について「許容される演出の範囲を著しく逸脱した」と認定し、NHKの調査委員会が「やらせは行っていない」と結論付けたことには「視聴者の感覚と乖離(かいり)し、深刻な問題を矮小(わいしょう)化している」とした。

 NHKは指摘を重く受け止め、再発防止に全力を挙げなければならない。

 放送に対する政府の不当な干渉を許さないためには、関係者全てが襟を正し、事実に基づいた正確な報道をする必要がある。