春の筆はまだ少々荒っぽくて、吉野川の河川敷、菜の花畑も幾分塗り残しがあるようだ。六条大橋(上板町|石井町)から西条大橋(阿波市|吉野川市)付近。「とくしまマラソン」の中間点辺りである

 陽光を浴び、まぶしいぐらいに輝く黄色の花々。鮮やかすぎたのか、古くは歌の題材として顧みられなかったそうだ。油を採るため、広く栽培されるようになるのは16世紀ごろ。俳諧では春の風物として愛好されるようになった、と辞書にある

 <菜の花のはるかに黄なり吉野川>といけば完全な盗作。夏目漱石の句なら筑後川である。これは昼間の情景だろうが、どちらかといえば、夕景が似合う花なのかもしれない。<菜の花や月は東に日は西に>与謝蕪村

 唱歌「朧月夜」も、「入日薄れ」と夕暮れ時を詠む。せっかくなので、ここは2番を。<里わの火影も、森の色も、/田中の小路をたどる人も、/蛙のなくねも、かねの音も、さながら霞める朧月夜>高野辰之

 美しい風景ではあるものの、こんな時間まで走っているようでは間に合わない。2年ぶりに参加する当方、再び棄権の憂き目に遭う。講座で鍛えた同僚は、自己新記録を、と意気盛ん。こちらはつつましやかに目標2年と6時間55分

 菜の花に招かれて、見送られて。とくしまマラソンはいよいよこの日曜日。祈る好天。