高齢ドライバーによる悲惨な事故が後を絶たない。

 先月、愛知県知立市で76歳の男性が運転するワゴン車が和菓子店に突っ込み、客ら12人がけがをした。男性は「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と話している。

 9月には長野県千曲市で82歳の男性が運転する乗用車が長野自動車道を逆走し、トラックと衝突して死亡した。

 全国で相次ぐ高速道路の逆走は昨年、224件に上り、うち65歳以上が152件と7割近くを占めた。

 事故に巻き込まれた人たちの怒り、事故を起こした人の家族らの苦悩はいかばかりか。高齢化社会の進展に伴い、高齢ドライバーの事故防止は社会の重い課題である。

 全国の死亡事故数は昨年まで14年連続で減っている。だが、75歳以上が起こした割合は2003年の5・5%から昨年は11・7%に増えた。徳島県内では13・3%に上る。

 近年、特に問題になっているのは、認知症がもたらす事故の危険性である。

 昨年、75歳以上のドライバーが起こした死亡事故は471件で、うち4割近くが免許更新時の検査で「認知症の疑い」か「認知機能低下の疑い」を指摘されていた。

 県内では、認知機能検査が導入された09年以降、認知症と診断されて免許を取り消された人が30人に上っている。今年は10月末時点で11人と増加傾向にある。

 今年成立した改正道交法では、免許更新時に75歳以上を対象に実施している認知機能検査が強化された。17年6月までに施行されることになっており、免許取り消しが急増するとみられている。

 高齢になれば判断力や運動能力、記憶力の低下が誰にでも起こる。自分は大丈夫と過信せず、機能低下を少しでも自覚したら積極的に検査を受けるよう心掛けたい。

 認知機能は急激に低下したり、若い人に症状が出たりする場合もある。周囲の人が適切に助言し、専門機関に相談して危険な兆候を見逃さないようにすることが大切だ。

 事故の増加を背景に、免許の自主返納も年々増えている。認知症だけが理由ではないが、県内では今年10月までに1141人(うち65歳以上1078人)が返納しており、過去最高だった昨年1年間の883人(同841人)を上回っている。

 自主返納者を対象にタクシーやバスの料金を割り引く制度など、返納を後押しする動きも出ているが、まだまだ十分とはいえない。

 公共交通網が脆弱な県内で生活の足を失えば、たちまち買い物や通院に困る人が少なくない。健康に不安を抱えながら、ハンドルを握っている高齢者が多いのが現状だ。

 10年後には65歳以上の5人に1人、約700万人が認知症になるとの推計もある。免許返納者への支援や公共交通政策の在り方について、地域全体で知恵を絞り、効果的な対策を急ぐ必要がある。