妊娠・出産を理由に、解雇や降格、減給といった不当な扱いを受ける「マタニティーハラスメント(マタハラ)」について、深刻な被害実態が明らかになった。

 厚生労働省が行った調査で、派遣社員の48%と、正社員の21%が「経験したことがある」と回答した。

 マタハラが職場に深く巣くっている。そう考えざるを得ない。弱い立場にある派遣社員の約半数が被害に遭っていることは、問題の根深さを物語る。

 マタハラは決して許されない。そうした意識を職場や社会で徹底させるために、抜本的な対策を急ぐ必要がある。

 調査によると、マタハラを受けた人のうち、雇い止めや解雇は20%を超え、退職強要や非正規への転換強要も15%に上る。

 内容は、上司などから「迷惑だ」「辞めたら」といった嫌がらせの発言が半数近くに達した。受けた相手は、「直属の男性上司」が最も多かったが、「直属の女性上司」や「女性の同僚、部下」も少なくなかった。

 同性も加害者になるマタハラは、なぜ生まれるのか。

 妊娠や出産で休む人が出た場合、周囲の人が業務を代行することから、休暇取得について不公平を感じる。専門家は、そうした不満が原因と指摘する。

 まずは、職場の環境づくりが重要だ。誰もが長期休暇を取得できるのはもちろん、仕事を代行する社員を評価する仕組みや、代替要員を確保する体制の整備が欠かせない。どういった行為がマタハラになるのか、職場で理解を深め、意識を向上させることも大切である。

 そもそも、妊娠や出産を機に不利益な取り扱いをすることは、男女雇用機会均等法で禁じられているが、十分守られていないのが現状だ。

 妊娠を理由にした降格が機会均等法に反するかが争われた差し戻し控訴審で、広島高裁は今月、原告の訴えを認め、勤務していた病院に賠償を命じた。

 最高裁が昨年10月に示した「妊娠を理由にした降格は原則禁止」との判断に沿う形で、女性が逆転勝訴した。

 マタハラに警鐘を鳴らし、行政の実効性ある対策や、雇用主側の意識改革を求めた判決といえよう。

 徳島県内でも、マタハラが目立つようになった。昨年度の徳島労働局への相談件数は52件で、前年度の39件から33%も増加した。雇用主が法律で禁止されていることを知らないケースもある。マタハラと感じたら、労働局などに相談したい。

 マタハラの根絶には、国の取り組みが欠かせない。

 国は、最高裁判決以降、悪質な雇用主名の公表に踏み切るなど、企業への指導を強化しているが、まだ不十分だ。

 防止措置の義務付けや、相談体制の整備を促す施策を通じて、マタハラの予防に力を注ぐべきである。