国際通貨基金(IMF)が来年10月から、加盟国に配る特別引き出し権(SDR)の構成通貨に、中国の人民元を加えることを決めた。

 米国のドル、欧州のユーロ、日本の円、英国のポンドと肩を並べ、元が信頼できる通貨であるとの国際的なお墨付きを得たことになる。

 中国はアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設を主導するなど、国際金融での影響力拡大を急いでいる。その一環で、元のSDR入りを目指していた。

 世界第2位の経済大国の通貨が、相応の扱いを受けるのは自然な流れではあろう。ただ、世界経済の安定と発展に対して、より重い責任が伴うことを忘れてはならない。

 元は円やドルなどと比べて自由化の水準が低く、中国と海外との資本取引も厳しく制限されている。中国政府が本気で元を名実共に国際通貨にしたいのなら、一層の金融改革と対外開放に取り組む必要がある。

 SDRはIMFが創設した仮想通貨で、出資比率に応じて加盟国に配分され、通貨危機などで加盟国が外貨不足に陥った際、手持ちのSDRと引き換えに他の加盟国からドルなどの外貨を受け取ることができる仕組みだ。

 交換できる通貨と構成比(配分)は5年に1度、通貨の価値を総合的に判断して見直されており、現在はドル、ユーロ、ポンド、円の順となっている。今回の見直しで来年10月からはドル、ユーロ、元、円、ポンドの順となる。

 構成通貨に採用される条件は「通貨利用国の貿易量」と「通貨の取引の自由度」の二つである。元は前回2010年の審査で貿易量はクリアしたが、自由度が未達成だった。その後、中国が預金金利の自由化などを進めた結果、条件を満たしたとされた。

 だが、改革はまだ道半ばである。元の対ドル為替相場は1日当たりの許容変動率を上下2%に制限する「管理変動相場制」となっている。変動率は昨年、1%から広がったとはいえ、当局が厳しく管理しており、市場原理に基づく完全変動相場制とは程遠い。

 外国人投資家による株式投資の完全自由化や、銀行、証券、保険業への外資の本格参入なども実現していない。

 政策の決定過程が不透明なことも問題である。今年8月に中国人民銀行が元のレートを突然切り下げ、世界的な金融市場の動揺を招いたのは記憶に新しい。

 本格的な自由化や市場開放は、国内経済を混乱させる危険があるが、通貨の国際化には欠かせないことだ。透明性の確保と併せて、どこまで踏み込めるか注視したい。

 SDR入りは象徴的なものであり、市場への短期的な影響は限定的とみられる。しかし、長期的には元の影響力が強まるのは必至だろう。

 日本は円の存在感を保つためにも、国内経済の安定化と財政の健全化に力を注ぐ必要がある。