働く人の心の健康を守るため、年1回の「ストレスチェック」を事業所に義務付ける制度が始まった。

 仕事が原因でうつ病になり、過労自殺などにつながるケースは後を絶たない。事前に心理的な負荷をチェックすることで、精神的な不調に陥るのを防ぐのが狙いだ。

 誰もが不安なく働ける職場環境づくりに、本腰を入れて取り組む第一歩としたい。

 対象となるのは50人以上の事業所で、全国で約16万、正社員と一部の非正規を合わせて二千数百万人に上る。来年11月までに1回目を実施しなければならない。

 受診は義務ではないが、労働者は意義を理解して積極的に受けてもらいたい。

 チェックは、質問票の「ひどく疲れた」「よく眠れない」といった項目に答え、医師らが判定する。高ストレスと判定された人は、希望すれば、医師の面接指導を受けられる。

 質問票で国が推奨しているのは、計57項目で構成されている「職業性ストレス簡易検査票」だ。しかし、質問項目には、労働時間やハラスメントなど、重要なストレス要因が含まれていない。心理状態の正確な把握へ、項目を見直す必要もあろう。

 検査結果は機微に触れる個人情報のため、本人に直接通知され、同意なく企業に伝えることは禁じられている。

 結果に応じて、企業は職場の変更や勤務時間の短縮といった対策を取る必要がある。だが、受診の拒否や、その結果などを理由に、解雇や不当な異動など不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されている。

 ストレスチェックは、精神疾患を見つけ出すためのものではない。企業はそれを十分に理解し、運用するよう求めたい。

 制度が設けられた背景には、精神疾患での労災認定の増加がある。

 厚生労働省によると、昨年度に認定されたのは497件、申請は1456件に上った。未遂を含む過労自殺では、申請が213件で認定は99件だった。いずれも、統計を取り始めた1983年度以来、最多である。

 認定されたケースの原因は「嫌がらせ、いじめ、暴行」が最も多く、次いで「月80時間以上の残業」だった。

 増加の理由について「精神疾患が労災の対象になるとの認識が広がった」とする見方もあるが、専門家は「大きな要因は過重労働」とし、職場環境の悪化を指摘している。

 効率化が推し進められ、少ない人数で多くの仕事をこなさなければならなくなると、過重労働や、従業員の人間関係にあつれきが生まれ、パワハラなどが起きやすくなる。休職や退職などが増えれば、企業にはむしろ大きな損失になる。

 制度の開始を契機に、企業は職場の実態を再点検し、労働環境の改善を目指してもらいたい。