国民年金と厚生年金の積立金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の7~9月期の運用結果が、7兆8899億円の赤字になった。

 GPIFは昨年10月、運用先の60%を占めていた国内債券を35%に減らし、国内外の株式を50%に倍増させる方針に変更した。

 株価上昇を狙う安倍政権の意向を受けたものだが、不安定な株式市場の動向に年金運用が左右され、リスクが高くなるとの懸念が現実となったといえよう。

 老後の安心を支える年金積立金は、国民の貴重な財産である。それを大きく減らし、年金給付に影響を与えるようなことは、万が一にもあってはならない。リスク軽減へ、運用の在り方を見直すよう求めたい。

 年金積立金は、現役世代が納めた年金保険料から、給付に使わずに余った分を積み立てたものだ。政府は約100年かけて計画的に取り崩し、年金給付の一部に充てることにしている。

 現在、約135兆円に上っており、これを運用するGPIFは世界最大規模の機関投資家とされる。

 7~9月期の赤字額は、四半期ごとでは、自主運用を始めた2001年以降で最大だった。運用利回りも、米中枢同時テロ後の01年9月末と、リーマン・ショックが起きた08年12月末に次いで3番目に悪かった。

 中国の景気減速に対する不安に端を発した世界同時株安が原因で、影響をもろに受けた形だ。

 これに対してGPIFの担当者は、株価が今年10月以降、回復基調にあることを挙げ、現時点での資産は3月末の水準に戻っているとの認識を示した。政府高官からも「全く心配ない」「長期的な視点で見てほしい」といった発言が出ている。

 短期的な変動に過度にとらわれるべきではないというのは、その通りだろう。

 日銀の大規模金融緩和策の影響で利回りが低くなった国債を減らし、業績が良い企業の株式を増やす。将来の年金給付水準を確保するために、高い運用益を目指す考えにも一理あろう。

 実際、運用方針を変更した14年度は、過去最高の15兆円超の黒字を記録した。

 しかし、楽観は禁物である。最近の株価上昇は実体経済に支えられたものではなく、世界的な金融緩和政策に負うところが大きいからだ。中国経済の変調に加え、近く米国が利上げを決めれば、市場が動揺する恐れがある。

 株式の割合を倍増させたため、株価下落による損失がより巨額になるのは必至だ。高い利回りと大きな危険は表裏一体だということを、忘れてはならない。

 政府に求められるのは、株価頼みの姿勢を改めることだ。今回の赤字を過小評価せず、リスクを減らす方策を検討すべきである。