医薬品メーカーとして、断じて許されない行為だ。

 熊本市の化学及(および)血清療法研究所(化血研)が、国に承認されたのとは異なる方法で血液製剤などを製造していたことが、第三者委員会の報告書で明らかになった。動物用ワクチンで同様の不正があったことも、きのう分かった。

 不正製造は40年前からで、幹部が隠蔽(いんぺい)に関与してきた。組織ぐるみの法令軽視であり、倫理観が欠如していると言わざるを得ない。

 厚生労働省は実態の解明を急ぎ、再発防止へ対策を講じなければならない。

 不正は今年5月、厚労省への匿名の情報提供で発覚した。厚労省は血液製剤の出荷差し止めやワクチンの出荷自粛などを求め、化血研の第三者委員会が調査していた。

 報告書によると、化血研は、血友病患者らに使用する血液製剤やインフルエンザ用のワクチンを、国の承認書に記載されていない物質を加えるなどして製造していた。

 生産性を向上させることなどが理由だという。患者の安全よりも自らの利益を優先するとは言語道断だ。

 不正があった製品は、いずれも出荷前の国の検定に合格しており、重大な副作用などは確認されていない。だが、患者は不安を拭い切れまい。

 驚くのは、国の査察を逃れる手口である。

 承認通りの製法で作ったとする偽の記録を用意したほか、過去の書類に見せかけるために紫外線を当てて変色させてもいた。歴代理事長を含む幹部が決定し、長年にわたって引き継いできたという。第三者委が「常軌を逸脱した体質」と厳しく非難したのは当然だろう。

 化血研は、薬害エイズ事件で血友病患者らから提訴された企業の一つである。1996年に和解したが、その裏で不正を続けていたことになる。まさに患者らへの裏切り行為といえよう。

 出荷自粛の影響で今秋、インフルエンザワクチンが一時品薄となった。本格的な流行時期を前に、ワクチン不足の懸念を招いた責任は重い。

 化血研には、抜本的な組織改革が必要だ。理事長ら幹部は辞任したが、それで済むものではない。法務・コンプライアンス部門の強化や、外部の第三者機関によるチェック体制の整備が欠かせない。

 不正を見抜けなかった厚労省の責任も問われる。

 化血研への査察は、日時や内容を事前通告していた。査察の一部を抜き打ちで実施するよう改めたのは、不正が発覚してからだ。果たして、業者との癒着やなれ合いがなかったと言えるのか。

 業界団体も、所属企業などに総点検を指示し、襟を正してもらいたい。

 厚労省は今後、化血研に業務改善命令などを出すことにしているが、厳格な行政処分が必要だ。同時に、二度と不正が起きない体制をつくり、医薬品行政の信頼を回復させなければならない。