公務員らの機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法が施行されて、1年がたった。

 6月末までに防衛、外務両省など10機関の計417件が機密に指定されたが、内容をチェックする監視機関が十分に機能しているとは言い難い。運用の実態は極めて不透明なのが現状だ。

 これでは、国民の「知る権利」や表現の自由が侵害されるとの懸念は拭えない。抜本的な見直しが必要である。

 秘密法は防衛、外交、スパイ防止、テロ防止の4分野で、安全保障に関する重要な情報を特定秘密に指定し、保全を図る法律だ。秘密を外部に漏らした場合、最高で懲役10年、漏えいを共謀したり唆したりした場合には、5年以下の懲役が科せられる。

 国の安全保障のため、秘密にしなければならない情報があることは理解できる。

 問題は、運用基準が曖昧で、国民に知らせるべき情報や政府に都合の悪い情報が秘密になるなど、恣意(しい)的に指定される心配があることだ。秘密の範囲が際限なく広がる余地もある。

 何が指定されたのか国民は知ることができず、理由が分からないまま罪に問われる恐れも否定できない。

 政府は、運用を監視する機関として、内閣官房に「内閣保全監視委員会」を、内閣府に「独立公文書管理監」と管理監を補佐する「情報保全監察室」を置いた。

 しかし、どれも身内であり有効性は疑わしい。実際、監視委員会は2回しか開かれておらず、いずれも10分程度だった。実質的な議論がなされたとはとても言えまい。

 衆参両院には「情報監視審査会」が設けられた。だが、質疑は非公開の「秘密会」で行われ、やりとりは公表されていない。

 しかも、審査会に示される資料は「日米間協力に関する検討、確認、協議等の情報」といった案件名を一覧にした「管理簿」が大半で、秘密そのものが開示されるケースはごくわずかだという。

 監視が形骸化し、政府の追認機関になるのなら、幾つ設けても意味はなかろう。

 秘密法は、安全保障関連法との関係でも問題がある。

 中谷元・防衛相は、自衛隊の海外派遣で国会承認を求める際、特定秘密は開示しない方針を示した。秘密を盾に、集団的自衛権行使の是非の判断材料が国会に提示されない事態もあり得る。

 会計検査院が、憲法上の問題があると指摘したことも見過ごせない。

 秘密指定された省庁の書類を検査できなくなるとの懸念を示したもので、内閣官房は支障が出ないよう省庁に通達するとした。だが、2年がたった今も通達を出していない。憲法軽視と言われても仕方あるまい。

 秘密法は問題が多過ぎる。国会は運用状況を検証し、抜本改正に取り組まなければならない。それができないのなら、廃止すべきである。