政府が、2015年度補正予算案を閣議決定した。

 規模は3兆5千億円で、安倍政権が掲げる看板政策「一億総活躍社会」の実現や、環太平洋連携協定(TPP)対策などに充てる費用が柱だ。年明けに召集される通常国会に提出する。

 その内容は、「ばらまき」に見える項目が少なくない。何のための補正予算なのか。目的や必要性について、国会で十分に審議すべきだ。

 多くの疑問が浮かぶのが、所得の低い年金受給者への3万円給付案である。

 政府は、消費税率を10%に引き上げるのに合わせて低年金者向けの給付を計画している。今回はそれを前倒しして実施するものだ。

 対象者は1100万人で、予算規模は3600億円に上る。低年金者を支援することで消費を下支えするためだという。

 そもそも、給付は増税に伴う痛みの緩和が目的のはずだ。前倒しをする根拠が不明確ではないか。

 さらに、本来の給付では所得制限により支給されない年金受給者500万人も、対象に加えている。非正規雇用など収入が少ない若者を除外する一方で、なぜ高齢者の給付範囲を広げるのか。

 消費の下支えという点でも懸念がある。リーマン・ショック後に支給された定額給付金は、景気刺激への効果が限定的だった。その二の舞にならないか。

 こうしたことを考え合わせると、投票率の高い高齢者層に受けの良い給付案は、来夏の参院選をにらんだものではないか、との疑念が湧く。

 TPP対策では、農地の大区画化事業990億円など、合わせて3400億円が計上されたが、緊急性があるのかどうか首をかしげる。発効は早くても2年後であり、急ぐべきはTPP協定文の全文翻訳の公開だ。

 政府は、大筋合意を受けて暫定的な協定文を公開したが、これは英文で千ページもある正文を約100ページに圧縮、翻訳したものだ。

 圧縮文には政府の解釈が含まれており、検証が欠かせない。まず、一般の国民が協定文の内容を理解し、検討できる環境を整えるべきである。そうせずに、多くの費用を使って対策を打ち出すことは、拙速との指摘を免れまい。

 一方、子育て・介護支援では、保育所整備の前倒しに500億円、介護施設の整備に900億円を計上した。これらは、働く意欲を持つ人の後押しにつながる。早い時期に着手することで、より大きな効果が生まれるだろう。

 補正予算の財源は、14年度予算で使い残した2兆2千億円と、15年度の税収の上振れ分などで賄う。

 新規国債発行額を15年度当初予算から4400億円減らすことにしているが、危機的な財政状況を考えると当然である。政府は、財政再建を着実に進めることを忘れてはならない。