政府が2016年度予算案を閣議決定した。

 一般会計の歳出総額は96兆7218億円と、4年連続で過去最大を更新した。高齢化に伴い医療や介護など社会保障費が増えたことが大きいが、来夏の参院選をにらんだ歳出増も目に付く。

 これらを賄う歳入では、税収を25年ぶりの高水準と見積もった。名目成長率が3・1%になるとの楽観的な見通しを前提にしており、成長頼みが過ぎよう。

 国と地方を合わせた借金残高は、先進国で最悪になっている。そんな現状を真摯(しんし)に受け止めれば、抜本的な歳出改革に踏み込んでいたはずだ。危機感の乏しい予算案からは、財政再建の道筋が見えてこない。

 政府は予算編成に当たり、「歳出全般を徹底して見直す」との基本方針を掲げていた。ところが、自民党内から「参院選をどう戦うのか」という圧力が強まり、抑制は不徹底に終わった。

 代表例が、政策経費73兆1097億円の4割超を占める社会保障費である。

 このうち、焦点となった診療報酬の改定は「薬価部分」を引き下げ、8年ぶりのマイナスで決着した。だが、診察料など「本体部分」は、日本医師会や厚労族議員の反発でプラスとなり、全体のマイナス幅を縮めてしまった。

 増加が目立つのは防衛費だ。米軍の後方支援拡大に対応する新空中給油機の購入など安全保障関連法施行を見据え、初の5兆円台となった。

 公共事業費を増やしたのも、参院選を意識したからだろう。中でも、農地の大区画化を進める土地改良関連事業は、15年度補正予算案を合わせると、農林水産省の概算要求をも上回る。環太平洋連携協定(TPP)対策絡みとはいえ、際立つ厚遇ぶりだ。

 政府の財政健全化計画は、政策経費の伸びを3年間で計1兆6千億円、年平均5300億円程度に抑える目安を定めている。初年度の今回はその範囲に収めたが、15年度補正で先取りした面が大きい。いわば数字合わせである。

 懸念されるのは税収が見込み通り増えるかどうかだ。前提とした名目成長率3・1%はバブル期並みで、過去10年間、一度も達成していない。

 新たな国債発行額を15年度当初から2兆円以上減らしたのも、税収を高くはじいたためだ。これにより国債依存度は35・6%とリーマン・ショック前の水準に戻ったが、それでも15%台の米国や25%台のフランスより高い。借金に頼る構造は同じである。

 16年度の国と地方を合わせた長期債務残高は21兆円増え、1062兆円に膨らむ。金利上昇のリスクが一層高まるのは間違いない。

 基礎的財政収支を20年度に黒字化するという目標も、遠のくばかりだ。

 無駄な歳出はないか。国民の生活を良くする予算になっているか。来年の通常国会で厳しく点検する必要がある。