東京一極集中の是正に向けた政府機関の地方移転について、政府は検討対象を徳島県が求める消費者庁など34機関に絞り込んだ。来年3月に結論を出す予定だ。

 安倍晋三首相は政府機関の地方移転を、地方創生の一環と位置付けている。どれだけ実現できるかで、その本気度が試される。掛け声倒れに終わらないよう、本腰を入れて臨んでもらいたい。

 今月14日に徳島県庁などを視察した河野太郎消費者担当相は、消費者庁の徳島移転について「ハードルはそんなに高くない」と述べ、積極的に取り組む意向を表明した。

 光ブロードバンド環境が充実し、サテライトオフィス(SO)が集積する神山町に同庁長官や職員を派遣して、業務遂行の可能性と課題を検証する方針だ。移転に向けた具体的な動きを歓迎したい。

 しかし、移転に前向きな大臣とは対照的に、消費者庁や消費者団体からは反対論が噴出している。「国会対応ができなくなる」「関係省庁や各種団体との連携に支障が生じる」などを理由に挙げ、東京を離れれば消費者行政の司令塔としての役割を果たせなくなると訴えている。

 この主張には賛同できない。東京でなければ仕事ができないというのであれば、政府機関を地方に移すという構想自体が成り立たなくなる。

 移転のネックとして指摘される距離的障壁にしても、テレビ会議システムなど情報通信技術(ICT)を駆使することで十分に対応は可能だ。神山町や美波町には、SOを設けるだけでなく、本社を移転した企業もある。もちろん、民間と国会対応が求められる省庁をひとくくりにはできない。

 だが、省庁は移転できない理由をあれこれと並べ立てるのではなく、どうすれば地方の良さを生かせるのか、その方策をまず探るべきである。東京至上主義の考えを改めなければ地方移転は進まない。

 ましてや政府は税制優遇などを掲げ、民間企業の本社機能を地方に移すよう促しているところだ。「隗(かい)より始めよ」。省庁が率先して範を示さなければならないのは当然である。

 消費者庁職員が神山町で行う試験勤務に向け、県はインターネットなどの専門分野を担当する職員による準備チームを発足させた。「なぜ徳島か」「徳島に移せばどんなメリットがあるのか」をより具体的に説明し、実証できるよう取り組んでもらいたい。

 政府機関の地方移転は、地方創生とともに、首都直下地震などの大災害に備える危機管理の面からも重要な課題である。

 地方移転はこれまでにも検討された経緯があるが、目立った成果は挙がらなかった。省庁による抵抗が激しかったためだ。

 一極集中是正に向け、政治がリーダーシップを発揮することが大切だ。河野大臣の行動力と指導力に期待する。