薬王寺の境内から眺める景色に魅せられる。海の青が目にすがすがしい。サーファーには格別な青に違いない。「ちょうさ」と呼ばれる太鼓屋台が海へと繰り出すシーンもいい

 40年も離れていた故郷の美波町は、まるで異邦人が見るかのように新鮮に映った。明石知幸監督は「不思議に肩の力が抜けて撮れました」と振り返る

 東京で人材確保に悩むIT会社社長が古里の美波で活路を見いだし、新たな道を開く。映画「波乗りオフィスへようこそ」である。主人公のモデルはIT企業を経営する吉田基晴さん

 「古里で起きている課題はいわば全国共通。処方箋を吉田さんが書いていました」。それを撮りたかったという。吉田さんが持論とする、仕事と趣味を両立させる働き方「半X半IT」。Xはサーフィンだったり、遍路だったり、狩猟だったり。人それぞれのXを映し出し、有限である人生の一つの歩き方を浮かび上がらせている

 主役は関口知宏さんが務め、支え役を宇崎竜童さん、柏原収史さんが担う。明石監督が言う。「後で分かったんですが、3人とも実はミュージシャン。心地良いアンサンブルのように全体を引っ張ってくれました」

 映画は来月5日にイオンシネマ徳島で全国に先駆けて公開される。ご当地作品と侮るなかれ。芯の通った物語である。話はどこか温かい。