博物館の裏側を見学し、学芸員の仕事を体験する「ジュニア学芸員講座」が、徳島県立博物館で初めて開かれました。小学校高学年から中学生までの20人余りが参加。2日から4日までの3日間、動物や地学が対象の【自然コース】と、歴史や工芸などが対象の【人文コース】に分かれ、博物館が所蔵するたくさんの資料から自分が興味を持ったものを調査・展示することに挑戦しました。
博物館には、地域の文化や自然といった資源を守り伝える役割があります。ジュニア学芸員講座は「博物館の役割を知り、博物館の良き理解者になってほしい」と、資料を展示して伝えるまでに必要なプロセスを体験してもらおうと企画されました。
◆1日目(8月2日)
3日間を過ごす博物館の裏側を見学しました。
収蔵庫は、博物館の資料を収める場所。生物収蔵庫や地学収蔵庫、歴史民俗収蔵庫など分野別に分かれています。
金庫のように大きな扉を開いて中に入ると、もうひとつ大きな扉が。収蔵庫内はひんやりとしています。資料の劣化やカビ・虫がつくのを防ぐため、収蔵庫内の湿度や温度を一定に保っているのです。壁も二重三重になっていて、外気温に左右されないように工夫されていました。
「くん蒸室」では、外部から持ち込まれた資料を収蔵庫に収める前に、虫やカビを防ぐ作業をします。
資料の内部の状態までしっかり調査をするため、X線撮影室もありました。
展示室では、フラッシュ撮影を禁止しています。その理由は「光が資料を劣化させるから」。
学芸員がどれだけ資料を大切に扱っているか、どのように調査研究しているか、参加者はメモを取ったり写真を撮影したりして理解していました。
◆2日目(8月3日)
人文コース、自然コースに分かれて、本格的な調査・研究を行いました。
【人文コース】
収蔵庫から見つけてきたお気に入りの資料についてそれぞれ調査しました。選んだものは土器や鉄砲、かぶと、人形の頭、江戸時代の図鑑などさまざま。
大きさや重さを調べたり、資料をX線撮影したり。学芸員からアドバイスをもらいながら、細部まで観察して、調書に残しました。
【自然コース】
こちらはグループワーク。収蔵庫に入って、ブラックライトを照射して光る資料を探しました。
光る理由はさまざまだそう。収蔵庫の明かりを消して、整理された資料にブラックライトを当てていきます。よく光るものを選び出して、グループごとに発表したところ、貝類はよく光るものことが分かりました。
◆3日目(8月4日)
最終日は、研究成果を展示をするために、パネルや解説文を作り、展示ケースにレイアウトしました。
【人文コース】
資料の解説文を書き、パネルなどを手作りしました。
展示ケースには、資料と手書きの解説文、撮影したX線写真のコピーなども並べます。展示ケースの内側と外側から見比べて調整を繰り返し、見やすい展示に仕上げました。
【自然コース】
展示用のラベルをパソコンで作り、展示ケースの中の配置を考えました。
収蔵庫で見つけた石(鉱物)や貝類、家で見つけてきたものなど、ブラックライトで光る資料が並びます。展示ケースを上からのぞき込むと、ブラックライトに照らされて幻想的に光ります。
火縄銃と機関銃について調べた、人文コースの中学3年生、矢不良幸君(14)は「鉄砲の仕組みやいつの時代にできたものかを調べるのが面白かった。普段見られない博物館の裏側を見て、展示までにはいろいろと大変な作業があることが分かった。これから博物館に行くたびに、自分の作業を思い出して違った視点で見られると思う」と話していました。
ジュニア学芸員が手掛けた展示は、9月3日まで県立博物館2階の常設展入口で見ることができます。
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