2020年の東京五輪に合わせた営業運行の実現へ、着実に進んでいることを大勢が実感したに違いない。

 徳島県や海部郡3町などが阿佐海岸鉄道の阿佐東線(海陽町―高知県東洋町)に導入する、線路と道路を走行可能なデュアル・モード・ビークル(DMV)の使用車両が、沿線住民らに公開された。

 本格的な営業運行となれば世界初である。順調にスタートできるよう、準備を進めてもらいたい。

 DMVはマイクロバスを改造し、線路用の車輪と道路用のゴムタイヤを装備している。線路を走ってから道路に移り、病院や学校へ直行するといった、便利な運行ができる特徴を持つ。

 基になったのは、04年にJR北海道が開発に成功した車両だ。英国やドイツも成し遂げられなかった実用化が目前だったが、管内で発生した特急列車事故への安全対策や、新幹線整備に注力するという理由で、事業を断念した。

 JR北海道の営業運行開始を待って導入しようとしていた全国の自治体も多くが諦める中、徳島が事業継承を名乗り出たという経緯がある。

 徳島がDMVに固執したのは、阿佐東線の経営を立て直す切り札と位置付けているからだ。

 阿佐東線の利用客は、運行を始めた1992年度の約17万7千人をピークに減り続けてきた。最近はやや持ち直しているものの、2017年度は6万人と初年度の3分の1程度。開業から26年で黒字決算は一度もなく、基金の取り崩しや補助金頼みの厳しい経営が続いている。

 県などが車両製造や駅舎改築に約13億円を投じるところに、この事業に懸ける意欲がうかがえる。多額の投資を無駄にしないよう戦略を練らなければならない。

 最初のうちは物珍しさもあって需要はあろう。車両公開時にも、全国から鉄道ファンが訪れたほどだ。人気を長く維持するには、新たな需要を取り込む工夫が欠かせない。常設の運行ルートをどう設定するかが、当面の成否を左右すると見ていいだろう。

 国土交通省の指針で、阿佐東線はDMV専用路線となり、現行の鉄道車両は使えなくなる。DMV1両の定員は二十数人だから、5分の1に減るという難点が生じる。

 こうした不利をどう打ち消すか。DMVの特性を最大限に生かし、有効なルートを編み出す必要がある。

 一度は検討を諦めた全国の第三セクター鉄道も注視している。「阿佐東線が成果を上げれば、追いかけたい」(山形県朝日町の担当者)といった期待を背負っていることを忘れてはならない。

 何より重要なのは安全である。車両の安全は立証済みというものの、阿佐東線としての運行方式が大きく変わる。運転士と設備の習熟訓練に万全を期すのは大前提である。世界初の営業運行だけに、警戒を怠ってはならない。