米アカデミー賞を受けた映画「グリーンブック」が描くのは、1962年の米国だ。「本当なら『50年前のことだなんて、信じられる?』と言える時代になっていないといけないのに、残念ながらあまり変わっていない」とピーター・ファレリー監督は語る

 南部でのコンサートツアーを企画した黒人天才ピアニスト、ドクター・ドナルド・シャーリー。運転手兼用心棒として雇われたイタリア系白人トニー・リップ。旅行ガイドとして手渡されたのが、黒人が利用できる宿や店が載ったグリーンブックだった

 むきだしの人種差別が、合法的に行われていた南部で、差別や暴力を避けるためには、こうした本が欠かせなかったのである。反目しあっていた2人だが次第に心と心を通わせていく

 県内でも上映中。なので印象に残ったシーンを一つだけ。トニーは疑問だった。なぜ、わざわざ大変な場所でコンサートを開くのか

 黒人を拒んだレストランで、音楽仲間がこんなふうに代弁する。「いくら才能があっても、世の中は変えられない。勇気こそが人を変える。彼はそう考えたんだ」

 実話である。終生友情で結ばれた2人が、相次いで亡くなったのは2013年、オバマ大統領の時。そして今、米国は、世界は、深い所ではあの頃のままじゃないか。泉下でそう言い合っているのだろう。