呼吸困難や肺炎発症も
乳幼児の肺炎の原因になるRSウイルス。2017年は全国的に8~9月に患者数がピークとなった。冬場を中心に流行すると思われがちだが、徳島県健康増進課の井原香課長補佐(保健師)は「年間を通して注意が必要な感染症」と指摘している。
県内23の小児科定点の医療機関からの報告によると、17年は9月11日~17日の1週間の患者数が最高で、213人に達した。1医療機関当たりの平均患者数は9・26人だった。
RSウイルスの特徴は感染力が非常に強く、乳幼児の感染リスクが高いこと。213人の内訳は、1歳未満が51人、1歳が87人、2歳が48人と、2歳以下が全体の9割近くを占めた。
ほとんどの子どもは2日から1週間で治るが、重症化するケースもある。初めて感染した場合は、重くなりやすいといわれている。1歳未満、特に6カ月未満の乳児、心肺に基礎疾患を持つ子ども、早産児らが感染すると、呼吸困難や肺炎などの重い症状を引き起こす可能性がある。中耳炎を合併することもある。
累計患者数は、14年1838人、15年1679人、16年1976人、17年2044人と近年、増加傾向にある。14~16年の流行は、いずれも12月だった。
今年は7月15日時点で457人と、まだ流行期を迎えていない。ただ、7月第1週(2~8日)が23人だったのに対し、第2週(9~15日)は45人と2倍近くに増えていることから、油断は禁物だ。
一度かかっても免疫はできず、何度も感染と発病を繰り返す特徴がある。抗ウイルス薬などの治療薬や有効なワクチンはなく、治療は発熱やせきを抑える薬の服用、鼻水やたんの吸引、解熱といった対症療法に頼るしかない。
県と県周産期医療協議会は、赤ちゃんがいる家庭への注意を喚起するために「赤ちゃんに対するRSウイルス・チェックリスト」を作成している。内容は▽姉や兄がいる▽姉や兄がせきをしている▽急に元気がなくなった—など。このうち3項目に該当があれば感染の可能性があるため、早めに小児科医を受診したい。
必ずしも発熱を伴うわけではなく、RSウイルスに感染していると気付いていない年長の子どもや大人もいる。せきやくしゃみなどの飛まつ感染、接触感染によって拡大するため、保育園や遊び場などで集団発生する可能性もある。乳幼児と接する際に、少しでもせきなどの症状があれば、マスクを着用するのが望ましい。
井原課長補佐は「接触感染のリスクを下げるため、子どもが日常的に触れるおもちゃ、手すりなどはこまめに消毒し、家族全員が手洗いや『せきエチケット』を心掛けてほしい」と呼び掛けている。
RSウイルス感染症 喉や気管支、肺などの呼吸器にRSウイルスが感染して起きる。せきやくしゃみによる飛まつ感染や、接触感染がある。4~6日間の潜伏期間を経て、発熱、せき、鼻水などの症状が数日間続く。多くは軽症で済むが、まれに呼吸困難や肺炎になるなど重症化することがある。