北朝鮮の核・ミサイルの脅威が再燃しかねない状況になってきた。

 北朝鮮の崔善姫外務次官が記者会見し、核・ミサイル実験の凍結について金正恩朝鮮労働党委員長の「決断次第」と述べ、見直しもあり得るとの認識を示した。また、金氏が短期間で判断を下し、立場を表明するとした。

 先月末のトランプ米大統領と金氏との2度目の首脳会談が事実上決裂したことを受けての発言だ。トランプ政権から譲歩を引き出すためのけん制との見方もあるが、予断は許さない。

 北朝鮮が非核化に逆行する行動を本格化させれば、米朝関係は一気に緊迫化することになる。北朝鮮には強く自制を求めたい。国際社会も、事態の悪化を招かないよう北朝鮮への働き掛けを強める必要がある。

 首脳会談では、北朝鮮が示す非核化の具体的措置に対して、米国がどの程度譲歩するかが焦点だった。

 北朝鮮は寧辺核施設の廃棄と引き換えに、2016年3月以降の厳格化した国連制裁の解除を持ち掛けたとされる。米国は寧辺施設以外も含む大量破壊兵器計画の完全放棄を要求するなど、立場の違いが鮮明になった。

 崔氏は、会談が物別れに終わった責任は米側にあるとして一方的に非難しているが、容認できるものではない。

 制裁解除は北朝鮮が完全な非核化への道筋を示し、具体化することが前提である。にもかかわらず、会談での提案は最良のもので、米側が相応の措置で応えない限り交渉を再開する考えはないとの主張は、身勝手すぎよう。

 非核化の進め方や制裁を巡る双方の隔たりは大きい。加えて、北朝鮮が廃棄を約束し、一部を解体した東倉里のミサイル発射場で復旧作業が続いているとの報告もある。

 米国は今のところ交渉継続に前向きだが、北朝鮮の対応次第では態度を硬化させる可能性もある。協議の中断が長引けば不確実性が増大することになる。早期に実務者協議を再開してもらいたい。

 心配なのは、韓国の文在寅大統領の存在感が薄れてきたことだ。南北融和ムードを基に米朝の仲介役を務めてきたが、崔氏は会見で「米国の同盟国のため、プレーヤーであって仲裁者ではない」と突き放す発言をした。

 北朝鮮は、制裁を理由に韓国が経済協力事業を進めないことに不満を示していたとされ、実利を得られない南北交流に見切りをつけようとしているとの観測もある。

 韓国内の世論調査では、文政権に対する支持率が過去最低を更新した。南北の関係改善にブレーキがかかってきたことが背景にあるという。

 北朝鮮政策を巡り米韓とも手詰まり感が漂っている。足並みの乱れも目につく。日本を含めた3カ国は改めて結束を確認するとともに、今後の対応策について綿密に擦り合わせるべきである。