着物の彩り 華やかに
絹の布地に描かれた色とりどりの模様が水中で踊る。バシャ、バシャ。職人がブラシを動かすと、しぶきが飛ぶ。
京都の代表的な伝統工芸で、300年以上の歴史を誇る「京友禅」。製造工程は分業化され、余分な染料やのりを洗い流す「水元」で作業は大詰めを迎える。
1960年代まで桂川や鴨川で見られた友禅流しが、環境汚染の懸念から工場内の水路に場所を移した。最盛期には70を超えた事業所は、今では10程度に減少。豊富な地下水の恵みが伝統を支える。
京都市右京区の「大平染色蒸工場」は20メートルほどの水路で作業を行う。地下水は不純物が少ない軟水のため、色移りが防げて染色に適する。蒸して染料を定着させた布地を浸すと、余分な汚れは下流へ。さらに職人がブラシの水圧で磨きをかける。その度に彩りは、はんなりと華やかさを増す。同工場の梁川雅彦社長(57)は胸を張る。「良質な水に職人の技が加わり、いっそう気品ある着物に仕上がっていく」。